「労災には入っているから」で止まっている会社は多いと思います。

ただ、実際に人がケガをしたあとで問題になるのは、労災保険が出さない部分のほうです。慰謝料は労災保険の給付項目にありません。休業中の補償も満額ではありません。そして下請けや業務委託の人が相手だと、そもそも誰の労災を使うのかから分かれます。

会社に残る部分を、5つに分けて並べました。

1. 労災が下りても、会社に残るもの

労災保険の給付は、療養・休業・障害・遺族・葬祭・傷病・介護と定められています。この中に慰謝料はありません。

休業については、療養のため働くことができず賃金を受けられない日の4日目から、1日につき給付基礎日額の80%(休業(補償)等給付60%+休業特別支給金20%)が支払われます。残りの2割は埋まりません。さらに最初の3日間(待期期間)は、業務災害であれば会社が労働基準法に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行うことになっています。

この「給付基礎日額の80%」は、毎月の給与の80%という意味ではありません。給付基礎日額は労働基準法の平均賃金に相当する額とされ、原則として事故が起きた日より前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の日数(暦の日数)で割って求めます。

そして事業者には、労働契約法第5条により、労働者が生命・身体等の安全を確保しつつ働けるよう必要な配慮をすることが求められています。ここが果たされていなかったと判断されれば、会社が直接、損害賠償を求められることがあります。

2. 下請けの人がケガをしたとき

建設の事業が数次の請負で行われるときは、労働保険徴収法第8条により、原則としてその事業を一つの事業とみなし、元請負人のみを事業主とすると定められています。下請けの労働者のケガも、元請けの労災保険で扱われます。

ただし例外があります。元請負人と下請負人が申請して厚生労働大臣の認可を受けたときは、その下請負に係る事業について下請負人を元請負人とみなすとされています(同条第2項・下請負事業の分離)。

労災が下りたあとも、元請けに責任が残ることがあります。

3. 社長・一人親方・業務委託の人

労災保険は「労働者」のための制度です。社長や一人親方は、そのままでは対象になりません。希望する場合は特別加入という手続きがあります。

対象は少しずつ広がってきました。2021年9月1日に自転車配達員とITフリーランスが加わり、2024年11月1日からは、企業等から業務委託を受けているフリーランスが、業種・職種を問わず特別加入できるようになっています。

ただし、入っているかどうかは本人次第です。委託している側が「相手も入っているはず」と考えていると、事故のあとで話が合わなくなります。

あわせて気をつけたいのは、契約の名前が業務委託でも、働き方の実態が労働者に当たると判断されれば、通常の労災保険の対象になるということです。特別加入をしているかどうかの前に、その人が労働者かどうかが問われます。

4. 海外に人を出しているとき

労災保険の適用には属地主義がとられています。海外「出張」なら国内の事業場の労災保険で給付を受けられますが、海外「派遣」だと特別加入をしていない限り給付を受けられません。

分かれ目は勤務期間の長さではなく、どこの事業場に所属し、誰の指揮命令で働いているかです。長期の勤務でも国内の指揮命令下なら出張、海外の事業場に所属していれば派遣とみなされます。判断がつかないときは、あらかじめ労働基準監督署に確認しておくのが確実です。

5. では、何で備えるか

整理すると、備えは3つの層に分かれます。

  • 法定の労災保険 … 法律上の義務。療養と休業の一部
  • 上乗せの補償 … 会社の任意。労災保険で埋まらない部分
  • 使用者賠償への備え … 会社の任意。会社が損害賠償を求められたとき

1は法律上の義務ですが、2と3は会社の判断次第です。ここが手当てされているかどうかが分かれ目になります。

どれが必要かは、会社ごとに違います

業種、人数、下請けや業務委託をどう使っているか、海外に人を出しているか。ここが変われば答えも変わります。一般論では決まりません。

ご相談の進め方

次のような会社は、備えを確認しておきたいところです。

  • 人を雇っている(アルバイト・パートを含む)
  • 下請けや業務委託に仕事を出している
  • 配達や運搬など、社外で動く仕事がある
  • 海外に人を出している、出す予定がある

ご相談は、今の契約がどこまでをカバーしているかの確認から始めます。そのうえで足りない部分を洗い出し、必要であればお見積りをお出しします。

ご用意いただくとスムーズなもの
  • 現在ご加入の保険証券(労災の上乗せ・賠償責任保険など)
  • 従業員数と業種
  • 下請け・業務委託の使い方

お手元になければ、分かる範囲で構いません。

当社の取り扱い

※ここまでの説明は、法令にもとづいて事業者に生じうるリスクを整理したものです。以下の商品による補償の範囲を示すものではありません。

当社では、業務災害総合保険(ハイパー任意労災)をお取り扱いしています。

下請けや業務委託をどう使っているかで、必要な備えは変わります。まずは今の契約がどこまでをカバーしているか、いっしょに一つずつ確認するところから。

💬 会社の労災の備えを相談する(お問い合わせ)

商品の詳しい内容は、引受保険会社の公式ページをご覧ください。
業務災害総合保険(ハイパー任意労災)|AIG損保
ご検討にあたっては、パンフレットおよび「重要事項説明書」を必ずご確認ください。

出典

※本ページは2026年9月時点の一般的な情報提供です。制度は変わることがあります。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。個別の取扱いについては労働基準監督署または専門家にご確認ください。