歩いていてはねられたとき、頼りになるのは相手の保険だけではありません|人身傷害の「車内だけ」と「車外も」

保険の基礎知識

自動車保険は、車に乗っているときのための保険。そう思っている方がほとんどだと思います。ところが日の入りが早くなる秋から冬に増えるのは、車どうしの事故より、歩いている人がはねられる事故です。そして契約の中身によっては、自分が歩いていたときの事故にも、自分の自動車保険が使えます。
先に結論
  • 人身傷害保険は、基本は「契約の車に乗っているとき」の補償です。契約によって、歩いているときの自動車事故まで範囲を広げられます
  • 広げてある契約なら、相手との示談を待たず、自分の過失分を差し引かれずに、自分の保険会社から先に受け取れます。
  • 対象は本人だけではありません。配偶者・同居のご家族・別居の未婚のお子さままで含むのが一般的です。

日が暮れる時間帯、亡くなる方の半分は歩行者

警察庁は、日の入り時刻の前後1時間を薄暮(はくぼ)時間帯と呼んでいます。あたりが少しずつ見えにくくなり、車も自転車も歩行者も、お互いの発見が遅れる時間帯です。

警察庁が令和3年から令和7年までの5年間を分析した結果によると、死亡事故は一日のうち17時台から19時台に多く発生していました。薄暮時間帯の死亡事故は7月以降に増える傾向に転じ、10月から12月にかけて最も多くなります

もうひとつ、はっきりした特徴があります。だれとだれの事故だったかを見ると、薄暮時間帯は「自動車と歩行者」の割合が飛び抜けて高いのです。

死亡事故のうち「自動車と歩行者」が占める割合死亡事故のうち「自動車と歩行者」の事故が占める割合昼間約2割(1,323件/6,308件)薄暮時間帯約5割(771件/1,555件)夜間約4割5分(2,220件/4,981件)警察庁「薄暮時間帯における死亡事故に係る分析」より作成。令和3年〜令和7年の5年間の累計。昼間・夜間は薄暮時間帯を除く。薄暮時間帯=日の入り時刻の前後1時間。

歩行者の死亡事故の中身も見えています。事故の型では横断中が約8割。その横断場所は、横断歩道以外での発生が約7割でした。前照灯の早め点灯、明るい服装、反射材やライト。警察庁が呼びかけているのはこのあたりで、どれも今日から始められることです。

ただ、気をつけていても遭うときは遭います。その先の話をします。

歩いていてはねられたとき、治療費はどこから出るのか

相手が自動車なら、まず相手側の保険が出発点になります。すべての自動車に義務づけられている自賠責保険は、被害者1名あたりの限度額が、ケガ120万円、死亡3,000万円、後遺障害は程度に応じて75万円から4,000万円までと決まっています。足りない部分は、相手が入っていれば任意保険の対人賠償が引き受けます。

ここまでは多くの方がご存じのとおりです。問題は、その先に3つの壁があること。

相手の保険だけを待つときの3つの壁
  • 過失相殺……歩行者にも落ち度があったとされれば、その割合の分だけ賠償額が減ります。横断歩道以外での横断などが、まさにここに響きます。
  • 時間……いくら払うかは、話し合いがまとまってから。もめれば数か月から年単位になることもあります。その間の治療費や休んだ分の収入は、先に出ていきます。
  • 相手の備え……相手が任意保険に入っていないこともあります。その場合、自賠責の限度額を超えた分は相手本人に請求することになります。

過失割合がどう決まるかは別の記事にまとめました。相手が任意保険に入っていなかった場合の備えについてはこちらです。この3つの壁を、自分の側から先に埋められるのが人身傷害保険です。

人身傷害には「車内だけ」と「車外も」がある

人身傷害保険は、自動車事故のケガについて、約款の基準で計算した損害額(治療費や休業損害など)を、過失相殺による減額をせずに、自分の保険会社から受け取れる保険です。相手の賠償を待たず、先に受け取ることもできます。日本損害保険協会は、そう説明しています。

そのうえで、同協会はこう書き添えています。基本の補償範囲は契約した車に乗っているときの事故だが、範囲を広げた契約もある、と。広げると入ってくる例が、他の車に乗っているときの事故、歩いているときなどの自動車事故、自転車や電車といった乗り物での事故です。

人身傷害が付いていれば歩行中も自動で守られる、というわけではないのです。整理すると、こうなります。

どんな場面でケガをしたか搭乗中だけの契約車外まで広げた契約
契約した車に乗っているとき対象対象
他人の車やタクシーに乗っているとき対象外対象
歩いているときに車にはねられた対象外対象
自転車で走っているときに車にはねられた対象外対象

呼び方は保険会社や商品によってさまざまで、補償範囲の選択肢のこともあれば、特約を付ける形のこともあります。また、相手が自動車ではない事故(自転車で転んだ、など)まで含めるかは、さらに別の範囲です。名前ではなく、証券の補償範囲で確かめてください。

搭乗中だけに絞れば、そのぶん保険料は割安になります。どちらが正しいという話ではなく、暮らし方に合っているかどうかの話です。毎日車で移動する方と、駅まで歩いて通う方とでは、事故に遭う場面がそもそも違います。

守られるのは、契約者本人だけではありません

補償を受けられる人(被保険者)の範囲は契約によって違いますが、主なところは決まっています。証券に記載された記名被保険者、その配偶者、どちらかの同居のご親族、そして別居していてもこれまでに結婚したことのないお子さま。加えて、契約した車に乗っている間は、同乗していた方も対象です。

車を持っていないご家族が、実は守られていることがあります

下宿している未婚のお子さま、同居のご両親。車を1台も持っていなくても、ご家族のだれかの契約が車外まで広げてあれば、歩いているときの自動車事故で人身傷害が使えることがあります。日本損害保険協会も、配偶者や同居のご親族が人身傷害保険を契約していないか確認する必要がある、と案内しています。

逆に言えば、車を2台お持ちのご家庭で両方とも車外まで広げていると、同じ人が二重に守られていることになります。補償の重複は、保険料としてはもったいない部分です。

ただし、車外の事故で対象になるのは記名被保険者とご家族の範囲まで。同乗していたご友人は、車に乗っている間は対象でも、その方が別の日に歩いているときの事故までは対象になりません。

証券のどこを見ればいいか

確かめる場所は多くありません。証券を手元に置いて、次の3つを順に。

証券で確かめる3つ
  • 人身傷害の欄があるか。付けていない契約もあります。まずは有無から。
  • 補償範囲がどちらか。「搭乗中のみ」「車内のみ」と書いてあれば、歩いているときは対象外です。「車内・車外」と読める書き方なら、広げてある契約です。
  • 保険金額はいくらか。人身傷害は実際の損害額を約款の基準で計算して支払う仕組みなので、上限が低いと足りなくなることがあります。

車をお持ちでないご家庭では、この方法は使えません。その場合はケガに備える傷害保険や医療保険が受け皿になります。いずれにせよ、いま何が付いているかを知らないままでは選びようがない、というだけの話です。

出典

※本記事は2026年9月5日時点の一般的な情報提供です。人身傷害保険は、名称・補償範囲・被保険者の範囲・保険金の計算方法が保険会社や商品によって異なります。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。

「歩いているときのことまでは考えていませんでした」。人身傷害の話をすると、よくそう言われます。いまご契約の自動車保険が、車の中だけなのか、外まで届いているのか。証券をお持ちいただければ、その場で一緒に確かめられます。ご家族の契約とあわせて見ると、足りないところと重なっているところが見えてきます。売り込みより先に、いまの保険を一つずつ一緒に見直すところから。

💬 人身傷害の補償範囲を相談する(お問い合わせ)