事故の相手が任意保険に入っていなかったら|「4台に1台が無保険」の本当のところ

保険の基礎知識

「もし事故の相手が任意保険に入っていなかったら」。考えたくはないけれど、頭をよぎったことがある人は多いと思います。「4台に1台は入っていないらしい」という話も、どこかで聞いたことがあるかもしれません。その数字を出どころまでたどってみると、続きがありました。そして頼りになるのは、相手の保険ではなく自分の契約のほうです。

「4台に1台」は、共済を数えていない数字

損害保険料率算出機構が毎年まとめている「自動車保険の概況」に、対人賠償(相手をケガさせたり死亡させたりしたときの賠償に備える補償)がどれくらい普及しているかの数字が載っています。2025年3月末時点、全国の合計はこうです。

  • 保有車両数 82,699,840台
  • 自動車保険(民間の任意保険) 62,343,349台 = 75.4%
  • 自動車共済(JA共済・全自共・交協連・こくみん共済coop) 10,921,258台 = 13.2%
  • 共済・保険を合わせると 73,264,607台 = 88.6%

よく言われる「4台に1台」は、この75.4%だけを見た数字です。100%から引くと24.6%。たしかにおよそ4台に1台になります。ただ、この75.4%には共済が入っていません。共済を足した普及率は88.6%で、対人賠償の備えがない車は、およそ9台に1台という計算になります。

対人賠償の普及率(2025年3月末・全国計)共済・保険計 88.6%自動車保険 75.4%自動車保険 75.4%自動車共済 13.2%対人賠償の備えなし 11.4%(およそ9台に1台)出典:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」2025年度版 第31表(2025年3月末・全国計)

地域による差もあります。共済・保険を合わせた普及率がいちばん高いのは富山県の92.7%、いちばん低いのは沖縄県の80.4%でした。

※保有車両数・契約台数とも、一般原動機付自転車と特定小型原動機付自転車を除いた数字です。

それでも、ゼロにはならない

9台に1台。減ったとはいえ、走っていれば十分に出会う数字です。

すべての自動車には自賠責保険の加入義務があるので、相手の車にも自賠責は付いています。ただ、自賠責でまかなえる範囲は狭いのです。

  • 対象は相手のケガ・死亡だけ。こわれた車や物の損害(物損)は出ません
  • 被害者1名あたりの限度額がある。ケガによる損害は120万円、死亡による損害は3,000万円、後遺障害は程度に応じて最高4,000万円

つまり相手が任意保険にも共済にも入っていなければ、限度額を超えた分と車の修理代は、相手本人に払ってもらうことになります。日本損害保険協会も、相手の賠償資力が十分でない場合や、無保険自動車であるために損害賠償義務を果たせない場合があると説明しています。請求できることと、実際に受け取れることは別です。自賠責と任意保険の役割の違いはこちらの記事でも整理しています。

自分の契約の側にある、3つの備え

相手をあてにできないとき、代わりに働くのが自分の自動車保険です。

① 人身傷害保険|過失があっても、減らされない

契約した車に乗っていた人が事故で死傷したとき、約款に定める基準・計算方法で算出した損害額(治療費、休業損害など)を、自分が契約している保険会社から受け取れる保険です。相手がいる事故か単独事故かは問いません。

特徴は過失相殺による減額をしないこと。自分にも過失がある事故だと、相手から支払われる賠償金はふつうその分減らされます。人身傷害保険なら減額されず、しかも相手からの賠償を待たずに先に受け取れます。

対象になるのは本人だけではありません。記名被保険者、その配偶者、記名被保険者またはその配偶者の同居の親族、別居の未婚の子、そして契約した車に乗っていた人まで含まれます。範囲が広いぶん家族どうしで契約が重なっていることがあるので、損保協会も確認を促しています。契約によっては、他の車に乗っているとき、歩いているとき、自転車や電車での事故まで補償を広げることもできます。

② 無保険車傷害保険|死亡・後遺障害に限った上乗せ

対人賠償を契約していないなど賠償資力が十分でない車との事故で、運転者や同乗者が死亡または後遺障害を負ったときに、相手からの損害賠償に代わって自分の保険会社から補償を受けられる保険です。

間違えやすいのですが、支払われるのは死亡と後遺障害の場合だけです。ケガの治療費はこの保険の対象外で、そこは人身傷害保険の役割になります。

そして「無保険自動車」の意味は、思っているより広いのです。

  • 対人賠償責任保険などを契約していない相手自動車
  • 契約はあるが、運転者が年齢条件違反であるなどの理由で保険金が支払われない相手自動車
  • 契約はあるが、その保険金額が自分の無保険車傷害保険の保険金額より低い相手自動車
  • あて逃げなどで相手自動車が不明の場合

2つめを見落とす人は多いと思います。相手が保険に入っていても、たとえば「26歳以上補償」の契約で20歳の家族が運転していれば、保険金は出ません。契約があるかどうかではなく、実際に払われるかどうかで見るわけです。

③ 車両保険|自分の車の修理代

相手が対物賠償に入っていなければ、こわれた自分の車の修理代も相手に請求することになります。自分の車両保険を使えば修理はできますが、保険を使うと等級が下がって翌年度以降の保険料に響きます。修理費と、上がる保険料の合計とを見比べて決める場面です(等級のしくみ)。

主に効く場面支払われるのは
人身傷害保険自分や同乗者のケガ・死亡(相手の有無を問わない)約款の基準で計算した損害額。過失相殺による減額なし
無保険車傷害保険無保険自動車との事故で死亡・後遺障害を負ったとき死亡と後遺障害の場合のみ
車両保険相手が対物賠償に入っておらず、自分の車がこわれたとき自分の車の損害(使うと等級が下がる)

なお、自分にまったく過失がない「もらい事故」では、自分の保険会社が相手と示談交渉をすることができません。回収の交渉が要るときに効くのが弁護士費用特約です。

相手が自賠責にも入っていない、ひき逃げされた

ひき逃げで加害者が分からない。相手の車に自賠責保険が付いていない。こうなると加害者からも自賠責からも補償が受けられません。そのために国が用意しているのが政府の保障事業です(自動車損害賠償保障法 第72条)。国が加害者に代わって被害者の受けた損害をてん補する制度で、請求は保険会社などで受け付けています。

支払限度額は自賠責保険と同じですが、中身にいくつか違いがあります。

  • 請求できるのは被害者側のみ。加害者からは請求できません
  • 健康保険や労災保険などの社会保険による給付が受けられる場合、その金額は差し引いて支払われます
  • 国は支払った金額について加害者に求償します
  • 対象は人身事故の損害だけ。物損事故は対象外です
対象とならない主な場合
  • 加害者に賠償責任が発生しない場合
  • 被害者が保有者、運転者など、自賠法で定める「他人」にあたらない場合
  • 自動車の運行によって死傷したものではないとき
  • 請求期限(3年)を過ぎたとき

最後の請求期限3年は、うっかりしやすいところです。治療が長引いているうちに時間が過ぎてしまうことがあります。

まとめ
  • 対人賠償の普及率は、共済を含めると88.6%(2025年3月末)。「4台に1台が無保険」は共済を除いた数字で、実際に備えのない車はおよそ9台に1台
  • 自賠責は相手のケガ・死亡だけ。物損は対象外で、限度額もある
  • 相手をあてにできないとき効くのは、人身傷害保険・無保険車傷害保険・車両保険という自分側の契約
  • ひき逃げや自賠責もない相手には政府の保障事業。請求期限は3年

出典

※本記事は2026年8月時点の一般的な情報提供です。普及率は2025年3月末時点の数字で、毎年更新されます。無保険車傷害保険や人身傷害保険が契約に含まれるかどうか、名称や補償の範囲は保険会社・商品によって異なります。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。

「相手が無保険だったら」の備えは、たいていすでに自分の証券の中にあります。ただ、人身傷害・搭乗者傷害・無保険車傷害と名前が似ていて、どれがどこまで効くのかは証券を見ても分かりにくいところです。いまの契約をお持ちいただければ、何がカバーされていて、どこが空いているのかを一緒に確認します。売り込みより先に、いまの保険を一つずつ一緒に見るところから。

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