安いほうの車両保険では、あて逃げは出ません|「一般型」と「エコノミー型」の分かれ目

保険の基礎知識

「車両保険は高いから、安いほうにしました」。更新のときに、よく聞く言葉です。ただ、その“安いほう”が何を外しているのかまで確かめている人は、そう多くありません。分かれ目はひとつだけです。ぶつかった相手の車が、確認できるかどうか。ここが外れると、電柱にこすった修理代も、駐車場でのあて逃げも、自分で払うことになります。

車両保険は、自分の車の修理代を出す保険

対人賠償と対物賠償が相手に払うための保険なのに対して、車両保険は自分の車が受けた損害に払う保険です。日本損害保険協会の説明では、契約した車が「偶然な事故」で損害を受けたときに保険金が支払われます。偶然な事故というのは交通事故だけを指すのではありません。衝突、接触、墜落、転覆、物の飛来、物の落下、火災、爆発、盗難、台風、洪水、高潮まで含みます。自分の不注意で起こした事故も対象です。

では、実際につけている人はどのくらいいるのか。損害保険料率算出機構がまとめた2025年3月末の集計では、自家用普通乗用車で64.3%、自家用小型乗用車で52.9%、軽四輪乗用車で49.6%でした。同じ集計の対人賠償は順に83.2%、78.4%、77.9%です。車両保険は、つけるかどうかで判断が分かれている補償だとわかります。

対人賠償と車両保険の普及率(2025年3月末) 対人賠償 車両保険 83.2% 64.3% 78.4% 52.9% 77.9% 49.6% 自家用普通乗用車 自家用小型乗用車 軽四輪乗用車 損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」2025年3月末の普及率より

補償の範囲は、いくつかのタイプに分かれている

車両保険には、補償する損害を限定したタイプが用意されていて、限定するほど保険料は安くなります。損保協会が例として挙げているのは、次の三通りの組み合わせです。

損害の種類限定しないタイプ補償を限定したタイプさらに絞ったタイプ
相手の車との衝突・接触
(相手の車が確認できるとき)
火災・爆発・盗難
(台風・洪水・高潮などを含むことも)
×
単独事故など
(電柱やガードレールへの衝突、あて逃げ、墜落、転覆)
××

呼び名は会社によってばらばらです。限定しないほうを「一般型」、真ん中を「エコノミー型」と呼ぶことが多く、損保協会は「車対車+A」という商品名の例を挙げています。約款のうえでは「車両危険限定補償特約」といった名前がつくこともあります。選べる組み合わせも会社によって違うので、他社と同じ名前だから同じ中身、とは限りません。

あて逃げが出ないのは、相手が確認できないから

エコノミー型で支払いの条件になっているのは、ぶつかった相手の自動車が確認できることです。車同士の接触であっても、相手が走り去ってしまえばこの条件を満たしません。あて逃げが対象外になるのは、そういう理由です。損保協会も、保険料が安くなるかわりに補償範囲が狭まることを十分に認識する必要がある、と書いています。

電柱やガードレールへの接触、車庫入れの失敗も同じです。相手の車がそもそも存在しないので、限定タイプでは修理代が出ません。駐車場でこすった、縁石に乗り上げた。日常でいちばん起きやすいのは、じつはこちらのほうです。

ここは覚えておきたい

あて逃げされた後で警察の捜査によって犯人が検挙され、相手の車が確認できた場合には、保険金は支払われます。その場で相手がわからなくても、警察に届け出ておく意味はここにあります。

「一般型なら何でも出る」わけでもない

限定しないタイプを選んでも、約款で支払わないと決めている損害があります。損保協会が挙げている主なものは次のとおりです。

  • 地震・噴火、またはこれらによる津波で生じた損害(限定しないタイプで全損になった場合などに、50万円といった一定額を扱っている会社もあります)
  • 故障そのものによる損害と、摩滅・さび・腐食など自然の消耗による損害
  • タイヤだけに生じた損害(車の他の部分と同時に壊れたとき、火災や盗難のときは対象)
  • 車から取り外して車内にない部品や、工具を使わずに外せる付属品
  • 契約者や被保険者などの故意または重大な過失、無免許運転、酒酔い運転による損害
  • 競技や曲技、試験のために使ったことで生じた損害

並べてみると、線引きの意外さが見えてきます。台風や洪水で水につかった車は対象になるのに、地震で倒れた塀の下敷きになった車は対象外。同じ自然災害でも扱いが違います。水害と車両保険の関係は別の記事で詳しく書きました。

決める前に、保険証券で三つ

証券で確かめる3つ
  • どのタイプか/車両保険の欄に「一般」「限定」「車対車+A」などの記載があります。名前は会社ごとに違うので、迷ったら証券番号を控えて問い合わせるのが早道です
  • 免責金額(自己負担額)/一回目は0円、二回目以降は10万円、といった決め方もあります。免責金額のしくみはこちら
  • 保険金額/自家用の乗用車では、契約時の市場販売価格相当額を基準に決めます。同じ車種・同じ年式で、同じくらいの傷み具合の車を買い直すときの価格です。年式が進めば下がるので、更新のたびに変わります

もうひとつ、忘れやすい点があります。車両保険を使うと等級が下がり、事故から3年間は同じ等級でも低い割引率が適用されます。損保協会も、受け取る保険金より翌年以降の保険料の増え方のほうが大きくなる場合がある、と説明しています。少額の修理なら、使わないほうが手元に残ることもあるわけです。この計算は事故有係数適用期間の記事で整理しています。

まとめ
  • 車両保険は自分の車の修理代に払う保険。相手への賠償とは別の補償
  • 補償を限定するほど保険料は安い。限定タイプの条件は「相手の車が確認できること」
  • だから電柱への衝突も、駐車場でのあて逃げも、限定タイプでは対象外になる
  • あて逃げは、後から犯人が検挙されて相手の車が確認できれば支払われる
  • 限定しないタイプでも、地震・噴火・津波、故障、自然の消耗は対象外

出典

※本記事は2026年8月時点の一般的な情報提供です。車両保険のタイプの名称、選べる組み合わせ、補償の範囲、免責金額の設定方法は保険会社や商品によって異なり、改定されることもあります。普及率は損害保険料率算出機構による2025年3月末時点の集計です。ご自身の契約については、保険証券・約款や契約概要・重要事項説明書、ご契約の保険会社・代理店に必ずご確認ください。

「うちの車両保険、どっちで入っているんだろう」。証券を見ればわかるはずなのに、その欄だけ用語が固くて読み飛ばしてしまう。よくあることです。証券を一枚お持ちいただければ、どのタイプで、自己負担がいくらで、どこまで出る契約なのかを、その場で一緒に読みます。売り込みより先に、証券の読み方から。

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