自動車保険の等級、手続きをしないと消えます|買い替え・手放す・乗り換えのときの引き継ぎ

保険の基礎知識

「20等級です」と言われても、ふーんで終わってしまいがちです。ですがこれは無事故を続けた人ほど大きくなる割引で、保険料が半分以下になっていることもあります。やっかいなのは、この割引が車ではなく、契約している人のほうに付いている点です。だから車を買い替えたり手放したりするときには、こちらから運ぶ手続きが要ります。放っておくと、積み上げた分がゼロに戻ることがあります。

等級は、14年かけて積み上げた割引

自動車保険の保険料は、事故の有無に応じて割引・割増されます。その段階を示すのが等級で、正式には「ノンフリート等級別料率制度」といいます。はじめて契約すると6等級から始まり、1年間無事故なら1等級上がる。事故で保険金を受け取ると、1事故につき3等級下がります。

どのくらい差がつくのか。日本損害保険協会が示している例では、6等級の割増引率は−13%、無事故で20等級まで上がると−63%です。6等級から20等級までは、無事故で14年かかります。14年かけて、保険料の半分ぶんほどの割引を育てていることになります。

等級が上がるほど割引は大きくなる(損害保険協会が示す例) −13% −46% −53% −63% 6等級 10等級 15等級 20等級 はじめて契約 無事故14年 引き継ぎの手続きを忘れると、ここまで戻ることも

※日本損害保険協会「損害保険Q&A」くるまの保険 問23の等級別割増引率例より作成。7等級以上は「無事故」と「有事故」で率が分かれ、図は無事故の場合です。実際の割増引率は保険会社によって異なります。

等級そのものの上がり下がりについては自動車保険の「等級」の仕組みで書きました。ここから先は、その等級を持ち運ぶ話です。運ぶ場面は、大きく4つあります。

どんなときすることしないとどうなる
更新のとき満期までに継続の手続き一定の期間を過ぎると新規契約の扱いに
乗り換えるとき前の契約の等級・事故を正しく伝える等級は自動で引き継がれます(リセットはできません)
買い替えるとき「車両入替」の連絡新しい車の事故に保険金が出ない
手放すとき「中断特則」の手続き次に契約するときは6等級から

① 更新のとき|満期をうっかり過ぎる

満期が来たら継続の手続きをします。これをすれば前の契約の等級はそのまま引き継がれます。ただし損害保険協会は、満期日から一定の期間を過ぎても継続手続きを行わなかった場合には新規契約として扱われ、それまでの等級アップによる割引が受けられなくなる、と説明しています。

もちろん保険会社から満期の案内は届きますし、契約者から継続しない意思が示されない限り自動的に契約を継続する特約を用意している会社もあります。それでも、引っ越して案内が届かなかった、口座を変えて引き落としが止まっていた、といったことは起こります。14年ぶんの割引が、郵便物の見落としで消えるのはもったいない話です。

② 乗り換えるとき|等級は、よくも悪くも付いてくる

保険会社を変えても等級は引き継がれます。背景には「自動車保険契約確認のための情報交換制度」(等級情報交換制度)というしくみがあり、保険会社だけでなく共済組合も参加しています。

ということは、逆も同じです。事故で等級が下がったあとに別の会社へ移っても、6等級に戻ることはありません。損害保険協会は、1〜5等級などの割増となる等級を適用する契約の情報を各社から集め、ほかの会社で更新したときに提供できるようにしている、と説明しています。会社を変えれば帳消しになる、という話は成り立ちません。

やりとりされるのは、保険の種類、契約者の氏名・住所、被保険者の氏名、車両登録番号、車台番号、保険期間、適用等級、事故の件数、事故有係数適用期間などの情報です。

乗り換えるときの3点
  • 前の契約の等級や事故の有無は、契約のときに正しく伝えることを求められる告知事項です
  • 前の契約の満期日と、新しい契約の始まる日にすき間をつくらないこと
  • 割増になっている等級も引き継がれます。乗り換えでのリセットはできません

③ 買い替えるとき|連絡しないと、保険金が出ない

ここがいちばん、こわいところです。

車を買い替えたからといって、保険を契約し直す必要はありません。所定の要件を満たせば「車両入替」という手続きで、いまの契約をそのまま新しい車に移せます。等級も、そのままです。

問題は、その手続きをしなかったときです。損害保険協会ははっきり書いています。車両入替の手続きを行わなかった場合には、車両入替後の自動車の事故について保険金は支払われません。保険料を払い続けていても、です。

車両入替で確認したいこと
  • 猶予自家用普通乗用車や自家用小型乗用車などの契約では、新しい車の自動車検査証(車検証)に所有者名が記載された日の翌日から一定期間内に手続きをすれば、記載日にさかのぼって扱える特約が付いている場合があります。ただし、付いているかどうかは契約によります
  • 要件1新しい車の所有者が、いまの被保険自動車の所有者/記名被保険者またはその配偶者/記名被保険者またはその配偶者の同居の親族、のいずれかであること
  • 要件2新しい車の用途車種が、いまの被保険自動車と同じであること(自家用8車種は同一の用途車種とみなして入替できます)

なお、車が変われば保険料も変わります。等級が同じでも、車検証に書かれた「型式」ごとの料率クラスが違うためです。新しい車の見積もりが思ったより高い(あるいは安い)ときは、たいていこれが理由です。

④ 手放すとき|等級は「預けて」おける

車を手放すとき、多くの方はそのまま解約します。それで終わりにすると、次に車を買ったときは新規契約、つまり6等級からのやり直しです。

ですが、契約した車の廃車・譲渡・返還などや、契約者の海外渡航でやむを得ず契約を中断する場合には、一定の条件を満たせば、中断後に新しく契約する保険に中断した契約の等級を引き継げる制度があります。これを「中断特則」といいます。等級を捨てるのではなく、預けておくイメージです。

中断特則のポイント
  • 手続きの期限があります。損害保険協会によれば、一般的に解約日から13か月以内(または5年以内など)です
  • 必要な資料は、中断証明書発行依頼書、保険証券、抹消登録証明書など、廃車・譲渡・返還等が確認できるもの
  • 期限や中断証明書の有効期間の決まりは保険会社によって違います。手放すと決めた時点で先に確認するのが確実です

転勤や留学でしばらく日本を離れる、しばらく車を持たない期間ができる。そういうときは、解約の連絡をするついでに「中断証明書はもらえますか」と一言たずねてみてください。あとで車に乗ることになったとき、いちばん助かるのは自分です。

おまけ|使い方が変わったときも、連絡が要ります

等級とは別の話ですが、同じ「連絡しないと困る」たぐいなので添えておきます。契約したあとに保険会社へ知らせる義務がある事項(通知事項)として、損害保険協会は次の2つを挙げています。

  • 契約した車の用途車種、登録番号の変更
  • 契約した車の使用目的の変更(たとえば、日常・レジャー使用の車を通勤・通学使用に変更するなど)

在宅勤務をやめて車で通うようになった、というのがまさにこれにあたります。故意または重大な過失によって遅滞なく通知を行わなかった場合には、契約が解除され、保険金が支払われないことがあります(通知しなかった事項と、事故による損害との間に因果関係が認められない場合には支払われます)。

まとめ
  • 等級は車ではなく人に付いている。だから、こちらから運ぶ手続きが要る
  • 満期を過ぎて放っておくと新規扱い。積み上げた割引がなくなる
  • 保険会社を変えても等級は付いてくる。割増の等級も同じ
  • 買い替えたら車両入替。しないと、新しい車の事故に保険金が出ない
  • 手放すときは中断特則。解約する前に、ひと言たずねる

出典

※本記事は2026年8月時点の一般的な情報提供です。車両入替や中断特則の要件・期限、中断証明書の有効期間、自動継続の取扱い、等級ごとの割増引率は、保険会社や商品によって異なり、改定されることもあります。ご自身の契約については、保険証券・約款や、ご契約の保険会社・代理店に必ずご確認ください。

車を買い替えるとき、手放すとき、更新のとき。等級の引き継ぎは、たいてい一本の連絡で片づきます。困るのは、その連絡が要ること自体を知らないまま日が過ぎることです。「今度、車を買い替えるんだけど」「しばらく乗らないんだよね」。そのくらいの入り方で構いません。売り込みの前に、まず手続きの抜けがないかを一緒に見るところから。

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