地震保険は、修理代が出る保険ではありません|100%・60%・30%・5%、4つの区分のしくみ

保険ニュース・法改正

「地震保険は入っています。ただ、いくら出るのかは考えたことがなかった」。証券を見ながら、そうおっしゃる方は少なくありません。地震保険は、火災保険や自動車保険とお金の出方がちがいます。かかった修理代をもとに計算するのではなく、損害の程度を4つに分けて、決められた割合を払うしくみです。ここを知らないままだと、いざというときに「思ったより少ない」と感じてしまいます。

火災保険に地震保険をつけた人が、過去最高の70.8%に

損害保険料率算出機構が2026年8月25日に公表した数字によると、2025年度に契約された火災保険(住宅物件)のうち、地震保険をつけた割合は全国平均で70.8%でした。前年度の70.4%から0.4ポイント増え、2003年度以降23年連続の増加。統計をとりはじめた2001年度以降で最も高い値です。

この「付帯率」は、その年度に契約された火災保険のうち地震保険がついていた割合を指します。全世帯のうち何%が入っているか、という数字ではありません。

※付帯率は、損害保険会社が扱う地震保険だけを集計した数値で、共済は含まれません(損害保険料率算出機構)。

実際に地震が起きたときの動きも、数字で出ています。2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震について、日本損害保険協会は、発生から7月31日までの4日間で地震保険の事故受付が40,291件あったとまとめています(2026年7月31日現在)。うち熊本県が37,620件。この件数には、建物・家財の調査依頼のほか、補償内容や契約内容についての相談・問い合わせも含まれます。

出る金額は、損害の程度で4つに分かれる

地震保険では、建物や家財の損害を「全損・大半損・小半損・一部損」の4つに分けます。そのうえで、区分ごとに決められた割合を払います。

損害の程度支払われる額
全損地震保険の保険金額の100%(時価額が限度)
大半損60%(時価額の60%が限度)
小半損30%(時価額の30%が限度)
一部損5%(時価額の5%が限度)
損害の程度と、支払われる割合100%全損60%大半損30%小半損5%一部損

※2017年(平成29年)1月1日以降に始まる契約の場合。それ以前は「全損100%・半損50%・一部損5%」の3区分でした(財務省)。

ここが火災保険との大きな違いです。火災保険は、原則としてかかった損害の額をもとに保険金を計算します。地震保険は、損害の程度を4段階のどれかに当てはめて、決められた割合を払います。修理見積りが200万円だったから200万円が出る、という計算にはなりません。逆に、4つのどれにも当てはまらない小さな損害は、支払いの対象外です。建物であれば、主要構造部の損害額が時価額の3%に満たない場合がこれにあたります。

建物と家財では、区分の基準がちがう

建物で見るのは、主要構造部(土台・柱・壁・屋根等)の損害額が時価額の何%にあたるか、です。

  • 全損=50%以上
  • 大半損=40%以上50%未満
  • 小半損=20%以上40%未満
  • 一部損=3%以上20%未満

家財は、家財全体の時価額に対して損害額がどれくらいか、で見ます。

  • 全損=80%以上
  • 大半損=60%以上80%未満
  • 小半損=30%以上60%未満
  • 一部損=10%以上30%未満

「主要構造部」で見る、というのは大事なところです。窓ガラスが割れた、壁紙がはがれた、門や塀が壊れた。そうした部分だけでは区分に届きにくい、という意味でもあります。

※建物にはもう1つ、焼失または流失した部分の床面積の割合で判定する基準もあります(全損=延床面積の70%以上、大半損=50%以上70%未満、小半損=20%以上50%未満)。また、床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水を受け、上のどれにも至らない場合は一部損となります。

なぜ「修理代の全額」ではないのか

財務省の説明では、地震保険は「地震等による被災者の生活の安定に寄与すること」を目的とした制度です。壊れた家をもとどおりにするためのお金ではなく、被災したあとの暮らしを立て直す当面の資金、という位置づけになっています。保険金額そのものも、火災保険の30〜50%の範囲内(建物5,000万円・家財1,000万円が上限)と決められています。

区分方式には、もうひとつ現実的な理由があります。大きな地震では、一度に何万件もの調査が発生します。熊本地震の4万件がまさにそうです。一件ずつ精密な損害額を積み上げていく方式では、支払いまでに時間がかかりすぎる。4つの区分に当てはめる方式は、早く払うためのしくみでもあります。

制度の後ろには政府がいます。民間の保険会社が負う責任の一定額以上を政府が再保険し、1回の地震等による保険金の総支払限度額は12兆円(うち政府分11兆5,553億円)と定められています。

いま確かめておきたい3つのこと

  • 火災保険の証券に「地震保険」の記載があるか。保険金額はいくらか。
  • 家財にも地震保険がついているか。建物だけ、というケースは珍しくありません。
  • ついていなければ、いま入っている火災保険の途中からでも追加できます。
更新を待たなくてもいい

地震保険は火災保険とセットでしか契約できませんが、すでに火災保険を契約している場合、契約期間の途中からでも地震保険に加入できます(財務省)。次の更新まで待つ必要はありません。

なお、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・骨とう、通貨、有価証券、預貯金証書、印紙、切手、自動車などは地震保険の対象外です。地震のときの紛失・盗難による損害も、対象になりません。

災害のあとの勧誘に注意

日本損害保険協会は、熊本地震のリリースでも「保険金請求を代行する」「保険で直せる」と勧誘する業者とのトラブルに注意を呼びかけています。保険会社を装い、調査費用の振込みを求めるケースもあるとのことです。保険会社がお客様に調査費用を請求することはありません。その場で契約せず、まずは契約している保険会社か代理店に連絡してください。

まとめ
  • 地震保険は、損害を全損・大半損・小半損・一部損の4つに分け、保険金額の100%・60%・30%・5%を払う
  • かかった修理代をそのまま払う保険ではない。区分方式は、大量の請求に早く払うためのしくみでもある
  • 建物の判定は主要構造部(土台・柱・壁・屋根等)が中心。家財は家財全体に対する割合で見る
  • 火災保険にすでに入っているなら、契約期間の途中からでも地震保険はつけられる

出典

※本記事は2026年8月時点の一般的な情報提供です。付帯率は2025年度、熊本地震の事故受付件数は2026年7月31日現在の数値です。損害の区分や補償の内容は、ご契約の時期・保険会社によって異なる場合があります。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。

「証券を見ても、地震保険がついているのか、いくらなのか分からない」というご相談はよくいただきます。お手元の証券を一緒に見ながら、建物と家財それぞれの金額を確かめるところからで大丈夫です。売り込みより先に、いまの契約を一つずつ見ていくところから始めます。

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