生命保険の受取人|離婚しても自動では変わりません
保険証券の「死亡保険金受取人」の欄を、最後に見たのはいつでしょうか。結婚したとき、子どもが生まれたとき、離れて暮らすことになったとき。家族のかたちが変わっても、証券に書かれた名前は、誰かが手続きをしないかぎりそのままです。受け取る人が違っていた、では取り返しがつきません。
受取人は、届け出るまで変わらない
保険法という法律に、はっきり書かれています。保険契約者は、保険事故が発生するまでは保険金受取人の変更をすることができる(第43条第1項)。そして、その変更は「保険者に対する意思表示によってする」(同条第2項)。保険者とは、保険会社のことです。
変えられる。ただし保険会社に申し出て、はじめて変わります。離婚届を出しても、名字が変わっても、保険会社が自動で書き換えてくれるわけではありません。証券の受取人はそのままです。
そして期限があります。変更できるのは「保険事故が発生するまで」。亡くなったあとで、遺された家族が受取人を変えることはできません。
- 契約している間で、保険金の支払事由が起きる前まで
- 被保険者が亡くなったあと、満期を迎えたあとは変更できない
- 窓口は保険会社。書面、コールセンター、契約者向けのマイページなど、会社によって取扱いが違う
変えるには、被保険者の同意が要る
ここでつまずく方がいます。死亡保険金の受取人の変更は、被保険者の同意がなければ効力を生じない(保険法第45条)。
用語をひとつだけ。「被保険者」は保険の対象になっている人、つまり亡くなったときに保険金が出る、その人です。保険料を払う契約者と同じこともあれば、違うこともあります。
夫が自分に保険をかけている(契約者も被保険者も夫)なら、同意するのは夫自身ですから話は早い。手間がかかるのは、妻が契約者で夫が被保険者、といった形のときです。受取人を変えたければ、夫の同意が要ります。
遺言で変えることもできます(保険法第44条)。2010年(平成22年)4月以降の契約が対象です。ただし条件があって、遺言が効力を生じたあと、相続人が保険会社に通知しなければ、保険会社に対して主張できません。通知が届く前に元の受取人へ保険金が支払われてしまうと、あとから新しい受取人が請求しても支払われない。遺言に書いただけでは、届いていないのと同じということです。
受取人が先に亡くなると、受取人は「増える」
見落とされやすいのが、受取人のほうが先に亡くなるケースです。保険法第46条は、保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる、と定めています。
「その相続人」は、亡くなった受取人の相続人です。たとえば父が自分に保険をかけ、受取人を母にしていた。母が先に亡くなり、そのまま手続きをせずに父が亡くなると、母の法定相続人だった人たち全員が受取人になります。子どもが3人いれば、3人。その人までが亡くなっていれば、さらにその法定相続人へと引き継がれていきます。生命保険会社によっては、受取人の法定相続人ではなく「被保険者の遺族」としている場合もあります。受取割合は、一般的に均等です。
書類の面でも重くなります。受取人が5人になれば、5人分の請求書類と本人確認が要る。ふだん行き来のない親族が含まれることもあります。ひとつで済むはずだった手続きが、そこまで広がってしまう。しかも、そうなってからでは変えられません。
税金の扱いも、受取人が誰かで変わる
死亡保険金には、相続税の非課税枠があります。国税庁の説明では「500万円 × 法定相続人の数」。ただしこれは、受取人が相続人である場合に限られます。相続人以外の人が受け取った死亡保険金に、この非課税の適用はありません。
お世話になった方や内縁のパートナーを受取人にした場合、その方は相続人ではないので、非課税枠は使えません。孫を受取人にしたときも、その孫が相続人でなければ同じです。受取人を決めるときに、そこまで説明を受けていないことは案外あります。
相続を放棄した人はどうなるか。死亡保険金は受取人自身の財産として扱われるので、相続を放棄しても受け取ること自体はできます。ただし放棄した人は相続人とみなされないため、非課税の適用は受けられません。なお、非課税枠を計算するときの「法定相続人の数」には、放棄した人も含めて数えます。
税金は家族構成や財産の中身で変わります。ここでお伝えできるのは一般的な扱いまでです。実際の判断は税務署や税理士にご確認ください。受取人の設定で税の種類そのものが変わる話は、保険金を受け取ったら税金はかかる?にまとめています。
- 受取人は、保険会社に届け出るまで変わらない。離婚や改姓では自動で変わらない
- 変更できるのは支払事由が起きる前まで。被保険者の同意が要る
- 遺言でも変更できるが、相続人から保険会社への通知が要る
- 受取人が先に亡くなったまま放っておくと、受取人はその相続人全員に広がる
- 相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は、受取人が相続人のときだけ
証券を出して、5分でできること
- 死亡保険金受取人の欄の氏名を、声に出して読んでみる
- 続柄が、いまの家族と合っているか(旧姓のまま、離れた相手のままになっていないか)
- 受取人が、すでに亡くなっていないか
- 複数を指定しているなら、受取割合はいまの考えと合っているか
- 指定代理請求人や家族登録も、あわせて古くなっていないか
受取人の欄は、家族のかたちが変わるたびに読み返す場所です。
出典
- e-Gov法令検索「保険法」(平成20年法律第56号)第43条〜第46条
- 生命保険文化センター「諸変更と届出」(生命保険契約の継続)
- 生命保険文化センター 生命保険Q&A「死亡保険金受取人が被保険者より先に死亡していた場合、保険金は誰が受け取る?」
- 生命保険文化センター 生命保険Q&A「相続放棄をした場合でも、死亡保険金を受け取れるの?」
- 国税庁 タックスアンサー No.4114「相続税の課税対象になる死亡保険金」(令和7年4月1日現在法令等)
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報提供です。契約ごとの取扱いは保険会社・商品によって異なります。ご加入の判断や手続きの詳細は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。税務の個別の判断については、税務署や税理士など専門家にご相談ください。
「証券がどこにあるか分からない」「受取人を変えたいけれど、何を出せばいいのか」。受取人の欄は、ご家族の事情が絡んで、ご自身では切り出しにくいこともあります。お手元に証券があれば一緒に確認しますし、見当たらなければ探すところからお手伝いします。売り込みより先に、いまの保険を一つずつ一緒に見直すところから。