ドルで増えていても、円に戻すと減ることがあります|外貨建て保険の「為替・金利・費用」
外貨で預かって、外貨で返す保険
外貨建て保険は、米ドルやユーロ、豪ドルといった外貨で保険料を払い込み、外貨で保険金や解約返戻金を受け取る保険です。終身保険・養老保険・個人年金保険などに、この仕組みを取り入れたものがあります。
受け取るときに外貨を円に換えるので、そのときのレート次第で、円で見た金額は上にも下にも動きます。生命保険文化センターは、円で受け取る保険金額などが円ベースでの払込保険料の総額を下回る可能性もあるとし、この為替相場の変動による影響(為替リスク)は契約者または受取人に帰属すると説明しています。保険会社が肩代わりしてくれる部分ではない、ということです。
円で見てプラスだった人は、1年で約77%から約65%に
銀行や証券会社などが売った外貨建て保険(一時払い=保険料を契約時にまとめて払うタイプ)については、金融庁が「共通KPI」という共通のものさしで結果を集計しています。契約を持っている人それぞれについて、払った保険料に対して解約返戻金などが今いくらになっているかを円換算で計算し、プラスの人が何%いるかを見るものです。
2026年3月に公表された分析(2025年3月末基準)では、共通KPIを公表した155の金融事業者の単純平均で、円換算してプラスだった人の割合は65.0%。前年(2024年3月末基準・156の金融事業者)の77.4%から下がりました。金融庁はこの下落を「為替水準の変動等の影響を受け」たものと説明しています。同じ商品を持ったままでも、円で見た評価はこれだけ動くということです。
金融庁自身が注記しています。ひとつは、この評価は基準日時点の為替レートで円換算した解約返戻金であり、満期まで持った場合や外貨のまま受け取る場合の評価とは異なること。もうひとつは、保険商品は長期保有が前提で、契約後の早い段階で解約すると、解約控除などにより解約返戻金が一時払保険料を下回る場合が多いことです。つまり「この商品は損」と決めつける数字ではありません。裏を返せば、円で見た結果は、円に戻す日を選べるかどうかでも変わります。
途中でやめると、為替のほかに「金利」でも動く
外貨建て保険のなかには、市場価格調整(MVA)という仕組みを持つ商品があります。中途解約したときに、そのときの運用資産(債券など)の値段を解約返戻金に反映させるものです。
生命保険文化センターの説明では、解約時の市場金利が契約時と比べて上がっていれば解約返戻金は減り、下がっていれば増えることがあります。「金利が上がったのだから増えているはず」と思って解約したら減っていた、はこの仕組みでは起こりえます。金融庁が2026年8月6日に公表した「2026年 保険モニタリングレポート」でも、MVAに関する苦情が依然として発生している生命保険会社があると指摘されています。
「利率」とは別に、費用が引かれる
| 費用の名前 | どんなお金か |
|---|---|
| 保険契約関係費 | 契約の締結・維持・管理に必要な経費。契約時の初期費用や、保険期間中・年金受取期間中の費用など |
| 資産運用関係費 | 投資信託の信託報酬や信託事務の諸費用など、特別勘定の運用によって発生する費用 |
| 解約控除 | 契約日から一定期間内に解約した場合に、積立金から差し引かれる金額(解約時のみ発生) |
同センターは、リスクの内容も費用の種類・料率も商品によって異なるとして、パンフレット、契約締結前交付書面(契約概要・注意喚起情報)、ご契約のしおりで確かめるようすすめています。示された利率だけを見ても、手元にいくら残るかは分かりません。
契約の前に、こちらから言えること
- 「重要情報シートを見せてください」…業態をまたぐ商品を比べやすくするために金融業界で導入された書面です。金融庁によると、代理店での導入率は2025年8月時点で95%。
- 「家族にも同席してもらいます」…金融庁は高齢の方への勧誘・販売について、親族の同席や、理解した内容が確認できる発言・反応を記録に残す取組を、代理店の改善例として挙げています。
- 「持ち帰って考えます」…その場で決めない。これだけで防げるものがあります。
- 申し込んだ後でも、条件を満たせばクーリング・オフができます。
国民生活センターに寄せられた生命保険関連の相談は、2025年度で4,232件(2026年5月31日現在の集計)。最近の事例として、「保険の代理店に勧められ2社の外貨建て終身保険の契約を申込んだ。説明と異なりリスクが多いのでクーリング・オフしたい」「円安になったので解約したが、思った以上に金額が増えておらず不満だ」といった相談が紹介されています。
外貨建て保険は、良い・悪いで決まる商品ではありません。保障もついていますし、長く持つことを前提に作られています。ただ、円で見た結果は「為替」「(途中でやめるなら)金利」「費用」の3つで動きます。この3つの説明を受けて納得できたかどうかが、入る・入らないの分かれ目です。
出典
- 生命保険文化センター「外貨建ての生命保険とは?」
- 生命保険文化センター「市場リスクを有する生命保険とは?」
- 金融庁「外貨建保険の共通KPIに関する分析(2025年3月末基準)」2026年3月17日(PDF)
- 金融庁「2026年 保険モニタリングレポート」2026年8月6日
- 国民生活センター「生命保険関連(各種相談の件数や傾向)」
※本記事は2026年8月31日時点の一般的な情報提供です。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。税務の取扱いについては、必要に応じて税務署や専門家にご相談ください。
「この利率、円で見るとどうなりますか」。その一言に、数字でお答えします。すでにお持ちの外貨建て契約の中身を、いっしょに確認するだけでも構いません。売り込みより先に、いまの保険を一つずつ一緒に見直すところから始めます。