解約返戻率が50%を超えると、経理の扱いが変わります|2019年に決まった法人保険のルール
分かれ目は「最高解約返戻率」
2019年(令和元年)6月、国税庁は法人税基本通達に9-3-5の2を新設しました(令和元年課法2-13)。対象は、法人が契約者、役員や使用人が被保険者となる保険期間3年以上の定期保険・第三分野保険で、最高解約返戻率が50%を超えるものです。
「最高解約返戻率」は通達の中で定義されています。契約時に示された解約返戻金相当額を、それを受け取るまでに支払うことになる保険料の合計額で割った割合。これが保険期間を通じていちばん高くなるときの数字です。
この率が50%以下なら9-3-5の扱いで、原則として期間の経過に応じて損金の額に算入します。50%を超えると、下の表のとおり一定期間は資産に計上することになります。
3つの区分と、資産に計上する割合
| 最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
|---|---|---|---|
| 50%超70%以下 | 保険期間の開始の日から、保険期間の40%相当期間を経過する日まで | 当期分支払保険料の額 ×40% | 保険期間の75%相当期間経過後から、保険期間の終了の日まで |
| 70%超85%以下 | 同上(40%相当期間) | 当期分支払保険料の額 ×60% | 同上(75%相当期間経過後から) |
| 85%超 | 保険期間の開始の日から、最高解約返戻率となる期間の終了の日まで(※) | 当期分支払保険料の額 × 最高解約返戻率 ×70% (開始の日から10年を経過する日までは90%) | 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間の経過後から、保険期間の終了の日まで |
※85%超の区分では、上記の資産計上期間が5年未満となる場合は保険期間の開始の日から5年を経過する日まで(保険期間が10年未満の場合は保険期間の50%相当期間を経過する日まで)とされています。また、率が最も高くなる期間が複数あるときは、いちばん遅い期間をとります。
資産に計上した金額は消えてしまうわけではなく、取崩期間に入ってから均等に取り崩して損金に算入していきます。つまりこの通達は「費用にできるかどうか」ではなく、いつ費用になるかを並べ直したルールだと考えると、腹落ちしやすいと思います。
小さい契約には例外があります
通達には2つの例外が書かれています。金額の小さい契約まで細かく資産計上させない、という趣旨のものです。
- 9-3-5の2 ただし書:最高解約返戻率が70%以下で、かつ年換算保険料相当額が30万円以下の保険は、9-3-5の例による(=資産計上の表は使わない)
- 9-3-5(注)2:保険期間を通じて解約返戻金相当額のない、短期払の定期保険・第三分野保険で、その事業年度に支払った保険料の額が30万円以下のものは、支払った日の属する事業年度の損金に算入していればそれを認める
どちらも、同じ被保険者について複数の契約があるときはそれぞれの金額を合計して判定します。1本ずつ見て30万円以下だから大丈夫、とはなりません。ここは見落としが起きやすいところです。
受取人が誰かで、まったく別の扱いになることも
もうひとつ、忘れられがちな条件があります。保険金や給付金の受取人が被保険者本人やそのご遺族で、役員や部課長など特定の使用人だけを被保険者にしている場合。この場合は資産計上の話ではなく、支払った保険料がその役員・使用人に対する給与として扱われます(9-3-5(2)ただし書、9-3-5の2 の注6)。
「幹部だけ手厚く」と考えて設計した結果、意図せず給与課税になっていた、ということが起こりえます。誰を被保険者にするかは、経理の扱いに直結します。
法人の定期保険・第三分野保険は、最高解約返戻率が50%を超えると、一定期間は保険料の一部を資産に計上します。割合は50%超70%以下で40%、70%超85%以下で60%、85%超はさらに別の計算です。70%以下かつ年換算保険料30万円以下、解約返戻金のない短期払で年30万円以下、という2つの例外もあります。いずれも「費用になるかどうか」ではなく「いつ費用になるか」の話です。実際の処理は契約内容ごとに変わるので、必ず顧問税理士にご確認ください。
出典
※本記事は2026年9月時点の一般的な情報提供です。通達の適用は契約時の契約内容に基づいて行われ、契約内容の変更があった場合の取扱いなど、ここに書ききれていない定めもあります。個別の会計・税務処理は必ず顧問税理士にご確認ください。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。
すでに入っている法人契約について、「いまどの区分に当たるのか分からない」というご相談もよくいただきます。証券と設計書を拝見すれば、解約返戻率の推移と経理上の扱いの見当はつきます。税務の最終判断は税理士さんにお渡しする前提で、まずは中身を一つずつ確認するところからで結構です。