病気で長く休む社員が出たとき、何がどこまで支給されるか|傷病手当金と、2026年4月からの両立支援
仕事以外の病気やケガなら、傷病手当金
健康保険には傷病手当金という給付があります。業務外の病気やケガで働けなくなったときの生活保障です。仕事が原因なら労災保険のほうになるので、まずここで分かれます。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと(療養担当者の意見等をもとに、本人の仕事の内容を考慮して判断)
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
最初の3日間は「待期」といって支給されません。ここで気をつけたいのが、連続して2日休んだあと3日目に出勤すると、待期3日間が成立しないという点です。仕切り直しになります。
いくら、いつまで
1日あたりの金額は、おおまかに標準報酬月額の平均額 ÷ 30 × 3分の2で計算します。つまり、だいたい月給の3分の2ということです。裏を返せば、残りの3分の1は入ってきません。住宅ローンや教育費は減らないので、ここが本人の不安の中身になります。
支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。「通算して」なので、途中で復帰して再び休んだ場合、支給された日数だけを数えます。断続的に休む病気では、この数え方が効いてきます。
心の不調で休むケースは増え続けています
厚生労働省が令和8年7月15日に公表した令和7年度「過労死等の労災補償状況」では、精神障害に関する労災の請求件数が4,958件(前年度から1,178件増)、支給決定件数が1,082件(同26件増)となりました。支給決定件数は7年連続の増加です。
これは労災と認められた分だけの数字なので、実際に心身の不調で休んでいる人はもっと多い、と考えるのが自然です。「うちは小さいから関係ない」という話ではなくなってきています。
2026年4月から、両立支援は努力義務になりました
2025年(令和7年)6月11日に公布された改正労働施策総合推進法では、職場における治療と就業の両立を促進するために必要な措置を講じる努力義務が事業主に課されました。この部分の施行は2026年(令和8年)4月1日です。
努力義務なので罰則があるわけではありませんが、方向としては「休んだら終わり」ではなく「治しながら働ける形をつくる」ほうへ動いています。就業規則の休職期間や復職の手順を、この機会に見ておくとよいと思います。
- 休職期間は何か月か。傷病手当金の1年6か月とかみ合っているか
- 復職の判断は誰が、どの書類で行うか
- 休職中の社会保険料の本人負担分を、どう回収するか
- 短時間勤務での復帰を認めるか。認めるなら給与はどうするか
4つ目の「社会保険料の本人負担分」は、実務でいちばん揉めるところです。給与が出ていない期間も保険料はかかり続けるので、会社が立て替えて後で回収するのか、毎月振り込んでもらうのかを先に決めておかないと、復職時に気まずい話が残ります。
民間の保険でこの領域を補う場合は、傷病手当金で埋まらない3分の1、そして1年6か月を過ぎたあとをどうするか、という順番で考えると必要な額が見えやすくなります。
業務外の病気やケガで働けないときは、健康保険の傷病手当金が支給開始日から通算1年6か月、月給のおよそ3分の2の水準で支給されます。待期3日は連続していることが条件です。精神障害の労災請求は増え続けており、2026年4月からは治療と仕事の両立支援が事業主の努力義務になりました。まずは自社の休職規程と、この1年6か月がかみ合っているかを確かめてみてください。
出典
- 全国健康保険協会 傷病手当金
- 厚生労働省 令和7年度「過労死等の労災補償状況」を公表します(令和8年7月15日)
- 厚生労働省 職場におけるハラスメントの防止のために(改正労働施策総合推進法・令和7年法律第63号)
※本記事は2026年9月時点の一般的な情報提供です。傷病手当金の支給の可否や金額は個別の事情で変わりますので、加入する健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)にご確認ください。休職・復職の運用は労務の専門家にご相談ください。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。
「社員が長期で休むことになったが、何をどう決めればいいのか」というご相談は、制度の確認から入ります。傷病手当金で埋まる部分と埋まらない部分を整理したうえで、保険で足すべきところがあるかを一緒に見ていきます。無いと判断したら、その旨をお伝えします。