健康診断は、受けてくれたらではありません|雇入れ時と年1回が会社の義務。費用も会社もちです

法人・事業の保険

そろそろ健診の時期ですね、と案内を配って、あとは本人まかせ。それで一段落、という会社は少なくないと思います。ただ法律の建て付けは少し違っていて、健康診断は「受けてもらう」ものではなく、会社が「行わなければならない」ものです。しかも2027年4月1日から、健診の項目そのものが変わります。

会社の義務であって、本人の心がけではありません

労働安全衛生法66条1項は、事業者は労働者に対して医師による健康診断を行わなければならないと定めています。同じ条の5項では、労働者の側にも受診の義務があります。ただし会社が指定した医師での受診を望まない場合は、ほかの医師で相当する健康診断を受けて、その結果を証明する書面を会社に出せばよいことになっています。

会社側が1項から3項の健康診断を行わなかった場合、また結果を本人に通知しなかった場合(66条の6)は、50万円以下の罰金の対象です(120条1号)。福利厚生として「やってあげる」ものではない、というのが法律の立て付けになります。

「うちのパートさんは対象?」の線引き

対象は「常時使用する労働者」です。厚生労働省は、これを次の2つを満たす人と説明しています。

常時使用する労働者とは
  • 契約期間が1年以上(その予定を含む)であること
  • 1週間の労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であること

そのうえで、行うべき健診は主に3種類あります。

種類いつ根拠
雇入時の健康診断雇い入れるとき安衛則43条
定期健康診断1年以内ごとに1回安衛則44条
特定業務従事者の健康診断その業務への配置替えの際と、6か月以内ごとに1回安衛則45条

細かいところですが、定期健診には「医師が必要でないと認めるときは省略できる」項目があるのに対し、雇入時の健診にはその省略の規定がありません。入社前3か月以内に受けた健診の結果を書面で出してもらえば、その項目は重ねて行わなくてよい、という形になっています。

費用は、会社が負担します

ここは迷いやすいところですが、厚生労働省はよくある質問の中で、法律で事業者に実施が義務づけられている以上「当然に事業者が負担すべきもの」としています。本人負担にする、あるいは補助にとどめる、という運用は想定されていません。

受けさせて終わり、ではありません

むしろ会社の仕事は、結果が返ってきてからが本番です。異常の所見があると診断された人については、医師の意見を聴き(66条の4)、必要があれば就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮といった措置を講じなければなりません(66条の5)。結果は本人に通知し(66条の6)、特に健康の保持に努める必要がある人には保健指導を行うよう努めます(66条の7)。

記録も残ります。健康診断個人票を作成して5年間保存(安衛則51条)。そして常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健診の結果を遅滞なく所轄の労働基準監督署長に報告します(安衛則52条)。

2027年4月1日から、健診の項目が変わります

2026年4月28日に公布された労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第89号)により、2027年4月1日から健診項目が次のように変わります。

2027年4月1日からの変更
  • 血清クレアチニン検査を追加(雇入時・定期・特定業務従事者・海外派遣労働者の健診)。長時間労働と慢性腎臓病の発症リスクとの関係などを踏まえたもので、既存の項目では拾えない腎機能の低下を把握するためです
  • 喀痰検査を削除(定期・特定業務従事者・海外派遣労働者の健診)
  • 肝機能検査の酵素名を変更。国際臨床化学連合の勧告に合わせ、GOTはAST、GPTはALT、γ-GTPはγ-GTになります

健康診断結果報告書と健康診断個人票の様式も、あわせて変わります。健診機関や産業医との打ち合わせは、2027年の実施分から必要になると考えておくとよさそうです。

健診結果は、本人の保険にも関わってきます

もうひとつ。健診で数値の指摘が出ると、その後ご本人が生命保険や医療保険に入るときの告知に関わってきます。「再検査を勧められたまま放置している」という状態が、いちばん動きにくい。入りたいときに入れない、という事態を避けるという意味でも、結果が返ってきたあとの一手間には価値があります。

この記事のまとめ

健康診断は会社の義務で、費用も会社の負担です。対象は契約1年以上かつ通常の労働者の4分の3以上働く人。雇入れ時と、その後は1年以内ごとに1回。そして結果が返ってきたあとの意見聴取・措置・通知までが一続きです。健康を損ねたときに会社の安全配慮義務が問われる場面では、この一連をきちんと回していたかが見られます。2027年4月1日からは項目も変わります。

出典

※本記事は2026年9月1日時点の一般的な情報提供です。健康診断の対象・項目・手続きは法令改正で変わります。自社の運用の可否や個別の判断は、所轄の労働基準監督署、産業医、社会保険労務士等にご確認ください。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。

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