同じ保険でも、全員か一部かで扱いが変わります|福利厚生として保険を入れるときの分かれ道

法人・事業の保険

「人が採れないから、福利厚生を厚くしたい」。そういうご相談が増えました。ただ、保険を福利厚生として入れるときには、商品を選ぶ前に決めておくことがあります。誰を対象にするか、です。ここで全員にするか一部にするかによって、経理上の扱いがまるで変わります。

会社が負担している「福利」は、意外と法定分が大半

厚生労働省の就労条件総合調査(令和3年調査)によると、常用労働者1人1か月あたりの現金給与以外の労働費用は73,296円。その内訳はこうなっています。

項目金額(1人1か月平均)構成割合
法定福利費(社会保険料など)50,283円68.6%
退職給付等の費用15,955円21.8%
法定外福利費4,882円6.7%

会社が「福利厚生」と聞いて思い浮かべる住宅補助や慶弔、健康関係の費用は、この一番下の法定外福利費4,882円のなかです。社会保険料の負担が大きいぶん、上乗せできる余地は限られている。だからこそ、少ない予算をどこに置くかの設計が効いてきます。

分かれ道は「全員か、一部か」

法人が契約者になって従業員を被保険者にする保険では、法人税基本通達に扱いが定められています。ポイントは、役員や部課長など特定の人だけを被保険者にしているかどうかです。

たとえば養老保険(9-3-4)。死亡保険金の受取人が被保険者のご遺族で、生存保険金の受取人が法人という形にした場合、支払った保険料の2分の1は資産に計上し、残りは期間の経過に応じて損金に算入します。ただし、役員や部課長その他特定の使用人だけを被保険者としている場合、その残額はその人に対する給与になります。

定期保険や医療・がん保険(9-3-5)も同じ構造です。受取人が被保険者やそのご遺族である場合、原則は期間の経過に応じて損金ですが、特定の人だけを被保険者にしているときは給与として扱われます。

つまりこういうことです
  • 全従業員を対象にした制度として組めば、福利厚生の制度として扱える余地がある
  • 「幹部だけ」「気心の知れた数人だけ」にすると、その人への給与とみなされ、本人に所得税がかかる形になりうる
  • 対象範囲は、商品を決めたあとに調整する項目ではなく、いちばん最初に決める項目

保険の前に、国の制度で足りることもあります

退職金の準備であれば、中小企業退職金共済(中退共)のように、国の助成がある制度が先にあります。医療費の負担軽減であれば、健康保険の高額療養費や傷病手当金が土台にあります。

すでにある制度で埋まる部分に保険を重ねても、費用のわりに従業員が実感しにくい。公的制度で埋まらないところはどこかを先に確かめてから、そこに絞って足すほうが、同じ予算でも効きます。

まとめ

福利厚生として保険を入れるなら、対象を全員にするか一部にするかを最初に決めてください。特定の役員や使用人だけを被保険者にすると、保険料がその人への給与として扱われる場合があります。そのうえで、中退共や健康保険で埋まる部分を確認し、残った穴に絞って足すのが、限られた法定外福利費の使い方としては現実的です。

出典

※本記事は2026年9月時点の一般的な情報提供です。労働費用の数値は厚生労働省 令和3年就労条件総合調査(常用労働者1人1か月平均)によります。保険料の経理・税務上の取扱いは契約内容と加入対象の範囲によって変わりますので、実際の処理は必ず顧問税理士にご確認ください。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。

「同業さんがやっている制度を、うちでもできますか」というご相談をよくいただきます。まずは対象にしたい人の範囲と、いま公的制度でどこまで守られているかを一緒に確かめるところからです。そのうえで、足りない部分だけをご提案します。

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