少しずつ傷んだ屋根は、台風のあとでも保険金が出ません|火災保険の「風災」と「経年劣化」の分かれ目

保険の基礎知識

台風が過ぎたあと、屋根の瓦がずれているのを見つけた。ベランダの波板が割れていた。そんなとき「火災保険が使えるかもしれない」と思い当たる方は多いと思います。実際、火災保険は火事だけの保険ではありません。ただ、同じ屋根の傷みでも、保険金が出るものと出ないものがあります。分かれ目になるのは屋根の状態そのものではなく、その傷みが「いつ、何によって」できたのか、です。

気象庁の平年値(1991年〜2020年の30年平均)では、日本に上陸する台風は年に3.0個。月別に見ると9月の1.0個がもっとも多く、次が8月の0.9個です。上陸しなくても、300km以内まで近づく「接近」は年11.7回あります。屋根や外壁が風にさらされる機会は、思っているより多いということです。

火災保険が守るのは、火事だけではありません

日本損害保険協会の説明によると、火災保険が対象とするのは火災・落雷・破裂・爆発だけではありません。台風や暴風による風災、大雪などの雪災、ひょうによる雹(ひょう)災、洪水による床上浸水などの水災も、商品によっては補償の対象です。台風で屋根が飛んだ、大雪で雨どいがつぶれた、という被害は、このうちの「風災・雹災・雪災」にあたります。

  • 火災、落雷、破裂・爆発
  • 風災、雹(ひょう)災、雪災
  • 建物の外部からの物体の落下・飛来、衝突・接触
  • 給排水設備の事故による漏水・水濡れ
  • 盗難による盗取、損傷または汚損
  • 水災(洪水による床上浸水など)
  • 不測かつ突発的な事故による破損・汚損

ただし損保協会は、同じ火災保険でも「種類によって補償される範囲は異なる」とはっきり書いています。同じ「火災保険」という名前でも、中身は契約ごとに違います。上の一覧が全部ついているとは限りません。まず見るべきは、お手元の保険証券です。

そして、風で傷んだ屋根に保険金が出るかどうかは、次の3つを順番に通り抜けられるかで決まります。

保険金が支払われるまでの3つの確認点保険金が支払われるまでの3つの確認点1風災の補償が、その契約についているか2事故による損害か、それとも劣化か3損害の大きさが、支払いの条件に届くか3つとも通れば、保険金が支払われます

いちばん多い分かれ目は、「劣化」かどうか

損保協会のQ&Aには、火災保険で保険金が支払われない主な事由が並んでいます。故意や重大な過失、戦争や暴動、地震・噴火・津波などと並んで、そこに書かれているのが「自然の消耗、劣化」によって生じた損害です。さび、かび、腐敗、ひび割れも同じ扱いになっています。いわゆる経年劣化は、火災保険の対象外ということです。

これは保険会社が意地悪をしているわけではなく、保険というしくみそのものから来ています。損害保険は「一定の偶然の事故」によって生じる損害を埋めるもの、と保険法(第2条)で決められています。年月とともに少しずつ進む傷みは、偶然ではなく、いつか必ず起きること。だから保険では引き受けられません。

難しいのは、その中間にあるケースです。何年も手入れをしていない屋根が、台風のあとで雨漏りをはじめた。原因は今回の風なのか、それ以前からの傷みなのか。見ただけでは分かりません。だから保険会社は、鑑定人などによる損害調査を行って原因と損害額を確かめます。

あとで効いてくる、2つのこと
  • 修理する前に写真を撮る。建物全体が写ったものと、傷んだ場所に寄ったものの両方。日付が残る形で。
  • 点検や補修の記録を残す。いつ、どこを、どの業者に見てもらったか。手入れをしてきた証拠になります。

どちらも「この傷みは今回の風でできたものです」と伝えるための材料です。被害のあとで用意するのは難しいので、ふだんから。

もうひとつの分かれ目は、損害の大きさ

原因が台風だとはっきりしても、それだけで保険金が出るとは限りません。損保協会のリーフレットには、すまいの保険(火災保険)は風災・雪災による損害について「一定額以上に達するものであれば補償の対象としています」と書かれています。つまり、小さな損害では保険金が出ない契約があるということです。

一方で、同じリーフレットには、損害が一定額(一定割合)に達しなくても補償する商品もあると書かれています。そちらには、損害額の全額を補償するものと、あらかじめ決めた免責金額を差し引くものがあります。どのタイプなのかは、契約ごとに違います。

契約のタイプお金の出方
損害額が一定額以上のとき支払うその額に届かない損害では、保険金は出ない
免責金額(自己負担額)を差し引く損害額から自己負担分を引いた残りが出る
損害額の全額を補償する損害額がそのまま出る

免責金額とは、損害の一定額部分を契約者が自分で負担するものとして、契約のときに決めておく金額のことです。保険料を抑えるために、あえて大きめに設定していることもあります。証券の「風災」「免責金額」「自己負担額」といった欄を見てみてください。免責金額のしくみは、こちらの記事で詳しく書いています。

被害にあったら、連絡の順番だけ間違えないように

保険法(第14条)では、損害が生じたことを知ったときは「遅滞なく」保険会社に通知しなければならない、と定められています。まずは契約している保険会社か代理店へ。そこから先は、だいたいこの順番で進みます。

  • 事故の連絡(保険会社が契約内容を確認します)
  • 受け取りまでの流れと、補償される内容の説明
  • 請求に必要な書類の案内と提出
  • 損害調査(事故の状況・損害の状況の確認)への協力
  • 支払う保険金の説明

この順番を逆にして、先に修理業者と契約してしまうと、話がこじれます。損保協会も、住宅修理について「保険金が使える」と勧誘する業者とのトラブルが起きているとして、修理を契約する前に保険会社か代理店へ相談するよう呼びかけています。詳しくは「保険で直せます」と訪問されたらをご覧ください。

それから、保険金を請求できる権利は3年で時効になります。「あのとき直したけれど、保険のことは考えなかった」という被害があれば、まだ間に合うかもしれません

まとめ
  • 火災保険は火事だけでなく、風災・雹災・雪災も対象。ただし補償される範囲は商品ごとに違う
  • 「自然の消耗、劣化」による傷みは対象外。保険が備えるのは、あくまで偶然の事故
  • 風災には「損害が一定額以上のとき支払う」タイプと「免責金額を差し引く」タイプがある
  • 被害に気づいたら、修理業者より先に保険会社か代理店へ。写真は修理する前に

出典

※本記事は2026年8月28日時点の一般的な情報提供です。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。

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