契約者を子に変えた日、税金はかかりません|決まるのは受け取るとき

保険の基礎知識

「親が払ってきた保険、名義を子どもに移しておいたほうがいいですか?」相続の話が出はじめたころに、よく聞かれる質問です。先に答えを言うと、契約者を変えたその日には、贈与税もほかの税金もかかりません。税金の扱いが決まるのは、そのあとお金を受け取るときと、保険料を払っていた人が亡くなったときです。

税金は「名義」より「だれが払ったか」で決まります

生命保険には、契約者・被保険者・受取人という3つの役があります(組み合わせごとの税金は「保険金を受け取ったら税金はかかる?」で整理しています)。契約者は契約の持ち主で、解約したり受取人を変えたりできる人です。

ただ、税金の計算で大事なのは、契約者がだれかよりも、実際に保険料を払ってきたのはだれかです。これを「保険料負担者」と呼びます。

国税庁は質疑応答事例で、保険料を払っていない契約者という立場は、相続税や贈与税のうえでは財産としての意味を持たないと説明しています。契約者が自分で保険料を払っていた場合でも、その人が亡くなるまでは課税の問題は起きない、という整理です。だから、契約者を変えたこと自体に贈与税はかかりません。

受け取るときに、払った割合で分かれます

変更した日に税金がかからないのは、扱いが先送りされているだけ、と考えると分かりやすいです。変更のあとで満期保険金や解約返戻金を受け取ると、そのお金はだれが何割の保険料を払ったかで分けて扱われます。

たとえば、父が契約者として保険料を400万円払い、途中で契約者を子に変えて、そのあと子が100万円を払ったとします。被保険者も満期の受取人も子です。

受け取ったお金は、払った割合で税金が分かれる 受け取ったお金は、払った割合で分かれます 払った保険料(合計500万円) 父が払った 400万円(8割) 子 100万円 満期で受け取ったお金 8割の部分 → 贈与税の対象 2割の部分 → 所得税の対象

金額は説明のための例です。実際の税額は、払い込んだ保険料や控除などを差し引いて計算します。

  • 父が払った分(8割)にあたる部分 父から子への贈与とみなされ、贈与税の対象になります。
  • 子が自分で払った分(2割)にあたる部分 子の一時所得として、所得税(と住民税)の対象になります。

途中で解約した場合も同じ考え方です。国税庁は、変更後の契約者が解約して解約返戻金を受け取ると、保険料を負担した人から贈与を受けたものとみなして贈与税がかかる、としています(解約返戻金のしくみは「解約する前に知りたい」でまとめています)。被保険者が亡くなって死亡保険金が出たときも、払った人ごとに分けて、相続税・所得税・贈与税のどれになるかが決まります。

払っていた親が先に亡くなったとき

気をつけたいのは、保険料を払っていた親が、被保険者より先に亡くなる場合です。たとえば、親が保険料を払い、子どもを被保険者にしていた終身保険などです。

保険金はまだ出ていませんが、契約そのものにお金としての値打ちがあります。そのため「生命保険契約に関する権利」として、相続税の対象になります。評価額は、亡くなった時点で解約したとすれば受け取れる解約返戻金の額が基本です(前納した保険料や配当金があれば、それも加えます)。

名義が子どもでも、関係ないとは限りません

契約者が最初から子どもでも、保険料を実際に払っていたのが親なら、親が亡くなったときに、子どもがその権利を相続したものとみなされます。国税庁は、この申告漏れを相続税の「誤りやすい事例」の一つに挙げています。

また、死亡保険金の「500万円×法定相続人の数」の非課税枠は、この権利には使えません。法律で、非課税枠の対象は死亡保険金に限られているためです。

なお、満期金も解約返戻金もない掛け捨ての保険は、この扱いの対象外です。

契約者が亡くなって契約者を変えたときは、解約返戻金相当額が100万円を超える契約なら、保険会社が変更の翌年1月31日までに「保険契約者等の異動に関する調書」を税務署へ出すことになっています。2018年1月以降の契約者変更については、保険金を支払うときの調書にも、変更前の契約者や変更の回数が書かれます。名義の変更は、記録に残るものだと考えておきましょう。

名義を変える前に、確かめておきたいこと

  • これまで、だれがいくら払ってきたか 引き落としの口座の記録や、毎年届く控除証明書が手がかりになります。
  • 変更後は、だれのお金で払うか 払う人が変われば、そこから先の分の扱いも変わります。
  • どんな形で受け取りそうか 満期まで続けるのか、途中で解約するのか、死亡保険金として受け取ることになりそうか。
  • 相続税がかかりそうな家庭か ほかの財産も含めて相続税の申告が必要になりそうなら、税務署や税理士に早めに相談すると安心です。
まとめ

契約者を変えた日には、税金はかかりません。税金の扱いが決まるのは受け取るときで、払った割合に応じて贈与税と所得税に分かれます。払っていた人が先に亡くなれば、解約返戻金相当額が相続税の対象になり、死亡保険金の非課税枠は使えません。名義よりも「だれが払ったか」を、家族が分かる形で残しておくことが大切です。

出典

※本記事は2026年10月時点の法令等にもとづく一般的な情報提供です。実際の税額や申告が必要かどうかは、契約の内容や相続・贈与の状況によって異なります。具体的な判断は、税務署や税理士にご相談ください。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。

「親の保険、うちはどうなっているんだろう。」名義を変える前に、まず証券を見ながら、契約者・被保険者・受取人と、これまでの払い込みを一緒に書き出してみませんか。税額の計算は税理士さんの領分ですが、その手前の「いま、どうなっているか」の整理ならお手伝いできます。名義を動かすかどうかは、そのあとで決めても遅くありません。

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