自動車保険の「目安の料率」が平均14.4%引き上げへ|事故は減っているのに、なぜ?
「参考純率」は保険料そのものではない
自動車保険の保険料は、大きく2つの部分でできています。ひとつは「純保険料率」。事故のときに保険金の支払いに充てられる部分です。もうひとつは「付加保険料率」で、保険会社の経費などに充てられます。
損害保険料率算出機構(損保料率機構)は、このうち純保険料率の目安となる「参考純率」を統計データから算出し、各保険会社に提供している中立の機関です。今回引き上げが届け出られたのは、この「目安」の部分です。
大事なのは、参考純率に使用義務はないということ。そのまま使うか、自社の実態に合わせて修正するかは各社の判断で、付加保険料率も各社が独自に決めます。つまり、実際にいつ・どれくらい保険料が変わるかは保険会社ごとに異なります(保険料のしくみは「保険料はどうやって決まる?」で詳しく書いています)。
どれくらいの引き上げ? 前回改定を大きく上回る
今回の参考純率は、2027年1月以降に保険期間が始まる契約を想定した水準で、平均14.4%の引き上げとされました(沖縄県以外・セット契約の平均)。前回2024年6月の改定は平均5.7%でしたから、それを大きく上回る幅です。
機構が示した契約例(20等級・45歳・26歳以上補償などの条件)では、次のような改定率になっています。
| 契約の内容(例) | 普通・小型乗用車 | 軽自動車 |
|---|---|---|
| 対人・対物・人身傷害・車両保険のセット | +17.2% | +17.5% |
| 上記から車両保険を除いたセット | +16.4% | +15.8% |
※あくまで参考純率の契約例です。実際の保険料の改定率・時期は、保険会社や契約条件によって異なります。
事故は減っているのに、なぜ上がる?
意外かもしれませんが、事故率そのものは、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)などの普及もあって緩やかに減っています。上がっているのは、事故1件あたりの支払額のほうです。機構は主な要因として次を挙げています。
- 物価上昇と高性能部品の普及で、部品代が高額に(センサー付きバンパーなど)
- 修理工賃の単価が上昇
- 修理期間が延び、代車費用などの間接的な損害も増加
機構のデータでは、対物賠償責任保険の平均修理費は2022年度の約33.6万円から2024年度には約38.6万円へ上昇。ヘッドランプユニットの部品費が1年で約17%上がった例も示されています。事故は減っても、1件の修理が高くつく。これが今回の引き上げの正体です。
新しくできる「安全運転で安くなる」しくみ
今回の届出には、引き上げだけでなく新しい割引のしくみも含まれています。「運行特性区分」といって、ドライブレコーダーなどで記録した走行データから急加速・急減速の頻度を測り、少ない人ほど保険料が安くなる3段階の区分です。区分の間の保険料差は10%とされています。
判定は一定期間の走行状況から総合的に行われ、1回の急ブレーキで決まるものではありません。危険を避けるためのブレーキをためらう必要はない設計です。この区分を商品に取り入れるかどうか、どんな形にするかも、各保険会社の判断になります。
私たちにできること
- 慌てて何かする必要はありません。引き上げの時期・幅は保険会社と契約条件によって違います
- 車両保険の要否や免責金額(自己負担額)の設定で、保険料は変えられます
- 家族の保険との補償の重複(個人賠償責任特約など)もこの機会にチェック
なお、2026年11月には自賠責保険(強制保険)の値上げも控えていますが、これは今回とは別の話です。自賠責は全国一律で会社による差がない一方、今回の任意保険は会社ごとに対応が分かれます。詳しくは自賠責値上げの記事にまとめています。
安全運転がそのまま保険料に反映される流れは、これから広がっていきそうです。
- 損保料率機構が、任意の自動車保険の参考純率を平均14.4%引き上げる届出(2026年6月23日)
- 参考純率は「目安」。実際の値上げ幅・時期は保険会社ごとに異なる
- 背景は修理費の高騰。安全運転で安くなる「運行特性区分」も新設
- 更新案内が届いたら、補償内容と保険料を見直すチャンス
出典
- 損害保険料率算出機構「自動車保険参考純率 届出のご案内」(2026年6月23日)
- 損害保険料率算出機構「自動車保険参考純率 改定(適合性審査結果通知受領)のご案内」(2026年6月30日)
- 日本自動車会議所「損保料率機構、自動車保険の参考純率14%引き上げ」
※本記事は2026年7月時点の一般的な情報提供です。今回の改定は各社共通の目安である「参考純率」に関するもので、実際の保険料は各保険会社の判断で決まります。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。
「うちの自動車保険はいつ・どれくらい変わる?」「車両保険、つけたままでいい?」そんな疑問は、更新のお知らせを持ってきていただければ一緒に読み解きます。売り込みより先に、いまの契約の中身を知るところから。それが結局いちばんの節約になります。