「保険金が簡単に受け取れる」というSNSの誘い|半数が知らなかった手口と、10代が本当に恐れていたもの

保険ニュース・法改正

「短期間で高収入」「簡単に稼げる」。いわゆる闇バイトの募集は以前から問題になっていますが、そこに保険が混じるようになりました。SNSで声をかけ、起きてもいない事故で保険金を請求させる手口です。

日本損害保険協会が2026年8月7日に公表した意識調査では、この手口を半数以上の人が「今まで知らなかった」と答えています。逆にいえば、どんな誘われ方をするのかを一度知っておくだけで、声をかけられた時点で気づけます。

どんな誘われ方をするのか

損保協会が注意喚起で示している流れは、おおむね次のようなものです。まずLINEのオープンチャットやX(旧Twitter)などで「保険金を簡単に受け取れる」と声をかけられます。次に、短期間のうちに複数の保険会社の傷害保険などに加入させられます。そして、実際には負っていないケガで保険金を請求させられる。なかには「サポート費」と称して数十万円ほどを先に払わせたうえで、請求のやり方を指南・指示されるケースも確認されているといいます。

調査では、こうした行為の具体例をどれくらい知っているかも聞いています。回答したのは、この行為自体を知っていると答えた3,248人です。

具体例と、それを知っていた人の割合(行為を知っている3,248人が対象・複数回答)
具体例知っていた割合
SNS(LINEオープンチャットやXなど)で「簡単に保険金が受け取れる」と勧誘される32.9%
実際には負っていないケガ(捻挫や打撲など)を装って保険金を請求する31.4%
「台風の被害があれば無料で家が直せる」といったSNS広告や投稿で勧誘される20.3%
SNS上の指示に従い、短期間に複数の保険会社の傷害保険に加入させられる20.0%
SNSで「車を処分したい」「金が欲しい」といった人を募集・マッチングさせる19.5%
経年劣化を自然災害と偽って申請させる18.0%
書類作成代行や審査を通すための指南料として、保険金を受け取る前に「サポート費」を支払わされる17.8%

いちばん知られている手口でも3割ほどで、「知っているものは1つもない」と答えた人も32.4%いました。なお、下のほうに並んだいくつかは、SNSに限った話ではありません。「台風の被害があれば無料で家が直せる」「経年劣化を自然災害として申請する」は、訪問や電話でくる住宅修理の勧誘とそのまま地続きです。こちらは「保険で直せます」と訪問されたらで詳しく書きました。

「知らなかった」が半数を超えた

調査は2026年3月13日から14日にかけて、全国の16歳から69歳の男女7,009人にインターネットで行われました(人口構成比に合わせて回収)。結果は次のとおりです。

SNSを通じた保険金詐欺の勧誘行為の認知度(全体7,009人) この手口を知っていましたか?(16〜69歳・7,009人) 8.2% 38.1% 53.7% 以前から、どのようなものか内容まで知っている(8.2%) 以前からなんとなく知っている・聞いたことがある程度(38.1%) 今まで知らなかった(この調査で初めて知った)(53.7%)

出典の数値をもとに作成。四捨五入のため合計は100%になりません。

「なんとなく聞いたことがある」まで含めれば4割半ばの人が知っていますが、内容まで分かっている人は8.2%にとどまります。年代別に見ても、この割合がいちばん高い16〜19歳の男性で18.6%。どの年代でも2割に届いていません。

10代が恐れていたのは、刑事罰ではなかった

この調査でいちばん考えさせられるのが、「もし関わってしまったら、何が怖いか」を聞いた設問です。全体では「詐欺罪として刑事罰を科される」が65.1%で最も多く、「刑務所に収監される」55.3%、「多額の賠償金を一生支払うことになる」53.2%と続きます。

ところが16〜19歳では、順番が入れ替わります。女性16〜19歳では「友人との人間関係が崩れる」62.4%、「家庭内での信頼や居場所を失う」59.3%が、「詐欺罪として刑事罰を科される」56.2%を上回りました。男性16〜19歳でも同じ傾向です。

家庭で話すなら

「捕まるよ」は、10代にはいちばん刺さる言葉ではないのかもしれません。この調査からは、いま一緒にいる人たちとの関係が壊れることのほうを重く受け止めている様子が読み取れます。頭ごなしに叱るより、「こういう誘いがあるらしいよ」と手口そのものを共有しておくほうが、結果的に効くのではないでしょうか。

誘われた、関わってしまった。そのときの連絡先

損保協会は、不審な勧誘や指示を受けた場合は絶対に保険契約や保険金請求の手続きをしないこと、そのうえで警察や消費生活の窓口に相談することを呼びかけています。すでに加担している可能性があるときの連絡先が「契約した代理店か保険会社」になっているのは、契約と請求の実物を見られるのがそこだからです。

相談・通報の窓口
  • 警察相談専用電話「#9110」/緊急ではないけれど警察に相談したいとき。全国どこからでも、その地域の警察本部の窓口につながります(受付は平日8時30分〜17時15分。都道府県で異なります)
  • 消費者ホットライン「188」/お住まいの地域の消費生活センター等につながる全国共通の番号です
  • 契約している保険会社・代理店/もう手続きをしてしまったかもしれない、という段階はここへ
  • 保険金不正請求ホットライン(損保協会)/見かけた話を通報したいとき。ウェブは24時間365日、電話0120-271-824は平日9時〜12時・13時〜17時(祝日・協会休業日を除く)。通報があったことを相手に伝えることはない、と明記されています

ちなみに調査で「目撃したらどこに相談するか」を聞いたところ、警察が54.4%、家族・パートナーが41.5%、消費者庁(消費者ホットライン)が24.4%。一方で保険会社は14.1%、損保協会は3.1%でした。保険の窓口は、まだあまり思い浮かべてもらえていないようです。

知らずに手を貸しても、責任は自分に戻ってくる

損保協会は「保険金詐欺は重罪」として、刑事罰の対象になるほか、民法上の損害賠償責任を負う可能性があるとしています。しかも対象は指南した側だけではありません。指示に従って、故意にうその事故や損害を申告して保険金を請求した人も含まれます。保険金詐欺だと確認された場合、各保険会社は警察への相談や刑事告発も検討する、とも書かれています。

とはいえ、必要以上に身構えることもありません。この手口が狙っているのは、仕組みを知らない人です。「保険金は、実際に起きた事故や損害に対して支払われるもの」という当たり前の一点さえ握っていれば、「起きていないことで請求する」という提案は、その時点でおかしいと分かります。

まとめ
  • SNSで「保険金を簡単に受け取れる」と誘い、短期間に複数の傷害保険に加入させて架空のケガで請求させる手口が確認されている
  • この手口を内容まで知っている人は8.2%。どの年代でも2割に届かない
  • 10代は刑事罰よりも「家庭や友人との関係を失うこと」を恐れる傾向がある
  • 不審な勧誘を受けたら、契約も請求もしないまま「#9110」か「188」へ
  • すでに手続きをしてしまったかもしれないときは、契約した保険会社・代理店へ

出典

※本記事は2026年8月時点の一般的な情報提供です。掲載した数値は、日本損害保険協会が2026年3月13〜14日に実施し同年8月に公表した調査によるものです。相談窓口の電話番号・受付時間は変わることがありますので、ご利用の際は各機関の案内をご確認ください。

「これって、大丈夫な話なんでしょうか」。保険金の請求で少しでもひっかかることがあれば、手続きを進める前に声をかけてください。ご家族が誘われているようだ、という段階でも構いません。分からないことは分からないとお伝えしますし、警察や消費生活センターにつないだほうがいい場面なら、そう申し上げます。

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