控除証明書の額が、払った保険料より少ないとき|配当金は差し引く決まりです

保険の基礎知識

「1年で6万円払ったはずなのに、控除証明書には5万4千円と書いてある。」年末調整の書類をそろえていると、こんなずれに気づくことがあります。証明書の間違いではありません。生命保険料控除は、払った保険料から、その年に受けた配当金を差し引いた額で計算する決まりだからです。

証明書の「A-B」を見てください

生命保険料控除証明書には、一般・介護医療・個人年金の区分ごとに、3つの数字が並んでいます。国税庁の記載例では、次の形です。

欄書かれている額
一般の生命保険料(A)その年に払った保険料
配当金(相当額)(B)その年に受けた配当金
一般証明額(A-B)控除の計算に使う額

勤務先に出す「保険料控除申告書」の金額の欄も、分配を受けた剰余金等を差し引いたあとの金額を書くことになっています。通帳の引き落とし額を自分で足し合わせる必要はありません。証明書の(A-B)の額を写せば足ります。

配当金は、保険料のあとからの精算です

保険料は、契約のときに、亡くなる人の数・運用の利回り・会社の経費の3つを見込んで計算されています(しくみは「保険料はどうやって決まる?」で整理しています)。実際の結果が見込みとずれて剰余が出たとき、それを契約者に戻すお金が配当金です。生命保険文化センターも、配当金を保険料の事後精算という性格のものと説明しています。

払った保険料の一部が戻ってきたのと同じことなので、控除の計算でも、戻った分を差し引きます。

  • 有配当の保険 配当金のしくみがある保険です。毎年の決算で分配する「毎年配当型」や、運用の差だけを5年ごとにまとめて分配する「5年ごと利差配当型」などがあります。
  • 無配当の保険 配当金がない代わりに、一般に保険料が低めに設定されています。配当がないので、(B)の欄は0円です。

配当金は、あらかじめ約束された金額ではありません。配当のない年が続くこともあります。同じ契約でも、年によって証明額が変わるのはこのためです。

手元に来ていない配当金も、差し引きます

配当金の受け取り方は、おもに4つです。保険の種類によっては、受け取り方が決まっていて選べないこともあります。

  • 積立 保険会社に預けておく方法。所定の利息がつき、途中で引き出すこともできます。
  • 買増 配当金で保障を買い増す方法。
  • 相殺 配当金の分だけ、払う保険料が安くなる方法。
  • 現金支払 配当金を現金で受け取る方法。

このうち、主な受け取り方は「積立」です。お金が口座に入ってこないので、配当をもらった実感がない方も多いと思います。

ここがポイント

積み立てにしている配当金も、積み立てた時点で受け取ったものとして、その年の保険料から差し引きます(国税庁の所得税基本通達76-7)。相殺で保険料に充てた配当金も同じです(同76-6)。引き出していない配当金でも、控除の計算からは外れません。

例外もあります。保険料の払込みが終わり、年金や保険金の支払いが始まったあとに受ける配当金は、差し引く対象になりません(同76-5)。

差し引くのは、同じ区分の中だけ

差し引きは、一般・介護医療・個人年金の区分ごとに、新制度と旧制度(2011年12月31日以前の契約)も分けて行います。一般の契約で受けた配当金を、個人年金の保険料から差し引くことはありません。

反対に、同じ区分の中なら、会社や契約が別でも差し引きます。国税庁の通達は、A社の契約では配当金を受けるだけ、B社の契約では保険料を払うだけ、という場合に、Bの保険料からAの配当金を引いて計算する例を挙げています。保険料の払込みが終わった終身保険など、その年に保険料を払っていない契約で配当金を受けたときも、同じ区分のほかの契約の保険料から差し引きます(年金などの支払いが始まったあとの配当金は除きます)。心当たりがあれば、その年の配当金がいくらだったかを保険会社に確かめておくと安心です。

1つの契約に主契約と特約があり、一般と介護医療に分かれる場合は、配当金もそれぞれの保険料の割合で分けて差し引きます。共済の「割戻金」も考え方は同じで、その年に受けた割戻金は掛金から差し引きます(呼び方の違いは「共済と民間の保険の違い」にまとめています)。

控除額はどれくらい変わるのか

2012年1月1日以後に結んだ契約(新制度)の一般生命保険料控除で、年6万円を払い、配当金を6,000円受けた例です。

配当金を差し引くと、控除額はどれくらい変わるか 年6万円を払い、配当金を6,000円受けた場合 払った保険料 60,000円 控除の対象 (証明額 A-B) 54,000円 配当金 6,000円 このままなら 控除額 35,000円 実際の計算 控除額 33,500円 計算式(年4万円超8万円以下):保険料×1/4+2万円。控除額の差は1,500円です。

控除額は35,000円から33,500円になります。この1,500円は、戻ってくる税金の額ではなく、所得から差し引く額の差です。配当金としてお金が戻っているぶん、家計の負担そのものは軽くなっています。証明書の額が少なくても、損をしたわけではありません。

払った保険料が多い方は、影響が出ないこともあります。新制度の一般生命保険料控除は、年8万円を超えると控除額が4万円で止まるので、配当を差し引いてもなお8万円を超えていれば、控除額は変わりません。

※2026年分は、23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除の計算式と上限(6万円)が変わります(「2026年分から一般枠が最大6万円に」)。

まとめ

生命保険料控除の対象は、払った保険料からその年に受けた配当金を差し引いた額です。積み立てたままの配当金や、保険料と相殺した配当金も差し引きます。差し引きは区分ごとで、同じ区分なら別の会社の契約どうしでも行います。年末調整では、控除証明書の(A-B)の額をそのまま使えば大丈夫です。

出典

※本記事は2026年10月時点の法令等にもとづく一般的な情報提供です。控除額は、ほかに加入している保険や家族構成、契約の時期によって変わります。具体的な税額や申告については、勤務先・税務署・税理士にご相談ください。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。

「この配当金、どの契約のものだろう。」と思ったら、控除証明書と保険証券を並べて、一緒に確かめてみませんか。配当の受け取り方が積立のままになっている契約や、払い終えた契約の配当も、一つずつ見ていくと全体がつかめます。売り込みより先に、まずはお手元の書類の読み方からお手伝いします。

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