海外旅行保険の目安、平均40.3%上げ|旅行4日の例は下がります
「海外旅行保険が4割も上がるらしい。」2026年6月に流れたそんなニュースを、覚えている方もいるかもしれません。損害保険料率算出機構が、海外旅行傷害保険の参考純率を平均40.3%引き上げる届出を出し、6月30日に金融庁の審査を通りました。見直しは10年ぶりです。ところが届出の資料を開くと、旅行の日数によっては逆に下がる例も載っています。見出しの数字だけでは分からないところを、資料に沿って見ていきます。
何が決まったのか
2026年6月23日、損害保険料率算出機構(損保料率機構)は、海外旅行傷害保険の参考純率を変える届出を金融庁長官に行いました。6月30日には、法律の基準に合っているという審査結果の通知を受けています。
前回の見直しは2016年3月です。新型コロナで海外へ出かける人が大きく減り、事故や病気の傾向がつかみにくい時期が続いたため、約10年そのままでした。コロナ後のデータが十分に集まったので、いまの実態を反映した、というのが機構の説明です。
参考純率とは、保険料のうち「保険金の支払いに充てる部分」の目安です。機構が統計から計算して保険会社に提供していますが、使う義務はありません。経費に充てる部分は各社が自分で決めますし、新しい料率で売り始める時期も保険会社が決めます(同じ仕組みは自動車保険の目安の料率の記事でも詳しく書いています)。
平均40.3%は、保険期間や補償の金額など、すべての契約条件をならした数字です。実際の保険料がいつ、どれだけ変わるかは保険会社ごとに違い、旅行の日数によっては下がる例もあります。
上がる理由は、円安と海外の医療費
機構によると、旅行中のけがや病気の治療費用に支払う保険金が急に増えています。主な要因は円安です。2016年に比べて円安が進み、ドルなど外国のお金で請求される治療費を円に直したときの額がふくらみました。各国で医療費そのものが上がっていることも背景にある、と機構は見ています。
数字で見ると、治療費用と救援者費用(家族が現地へ駆けつける費用など)の保険金は、支払った1人あたりで2014年度の98,132円から、2024年度には148,970円になりました。10年で約1.5倍、約5万円の増加です。今回の治療費用部分の引き上げのうち、約7割は円安の影響によるものとされています。
平均40.3%でも、4日の例は下がっています
届出の資料には、改定率の例が2つだけ載っています。補償の金額をそろえた同じ条件で、保険期間が4日の場合と7日の場合です。
| 保険期間 | 参考純率の改定率 |
|---|---|
| 4日 | −33.4%(引き下げ) |
| 7日 | +50.4%(引き上げ) |
条件:傷害死亡2,000万円、傷害後遺障害2,000万円、疾病死亡1,000万円、傷害治療費用・疾病治療費用・救援者費用等 各1億円。損保料率機構の届出資料に載っている例です。
参考純率(保険料のうち保険金に充てる部分の目安)の改定率です。実際の保険料の改定率ではありません。
海外旅行保険は、旅行の日数に合わせて保険期間を決めるのが基本です。料率も旅行期間の区分ごとに分かれていて、区分によってリスクが違うとされています。そのため、全体の平均が上がっても、区分ごとの動き方は同じになりません。なぜ4日で下がって7日で上がるのか、資料はその理由までは書いていません。
機構の集計では、2024年度に海外旅行傷害保険に入った人の旅行日数は、1〜4日が32.8%、5〜7日が34.5%、8〜14日が23.9%、15日以上が8.8%でした。7日までの旅行が、全体の約3分の2を占めます。旅行の日数で動き方が違う以上、「平均40.3%」をそのままご自分の旅行に当てはめないほうがよさそうです。
出かける前に、確かめておきたいこと
- 保険料は、申し込むときの見積もりで比べる 新しい料率をいつから使うかは保険会社ごとに違います。前回の旅行の金額やニュースの数字ではなく、行き先と日数を入れた見積もりで確かめるのが確実です。
- 治療・救援費用の金額 1人あたりの支払いが10年で1.5倍になったのは、海外でかかる治療費がそれだけ重くなったということでもあります。海外旅行保険の治療費用は、決めた保険金額を上限に、実際にかかった費用が支払われるしくみです。上限が低ければ、超えた分は自分で払うことになります。
- クレジットカードの付帯保険の中身 外務省は、カードの海外旅行保険は限度額や条件がカードによって違うので、内容をよく確認するよう呼びかけています。機構の資料も、そのカードで旅行代金を払ったときしか補償されないものや、補償の金額・範囲が十分でないものがある、と注意しています。見るべき点はカード付帯の「2つの落とし穴」の記事にまとめています。
- 帰ってからの受診にも期限がある 病気の治療費用は、旅行中に発病し、旅行中か、家に帰ってから72時間までに医師の治療を受けた場合が対象、というのが日本損害保険協会の説明です(旅行中に感染した法律で定める一類〜四類の感染症は、旅行が終わった日から30日まで)。帰国後に具合が悪くなったら、受診を先延ばしにしないでください。
海外旅行傷害保険の参考純率は、10年ぶりに平均40.3%引き上げられました。大きな理由は円安と海外の医療費の上昇です。ただ資料の例では、4日は下がり、7日は上がっています。ご自分の旅行の保険料は出かける前の見積もりで、治療費用の上限やカードの付帯条件とあわせて確かめてください。
出典
- 損害保険料率算出機構「【海外旅行傷害保険】参考純率届出のご案内(2026年6月23日金融庁長官への届出)」(平均40.3%の引き上げ、前回2016年3月の届出から約10年ぶりであること、円安と各国の医療費の上昇が背景であること、治療・救援費用の支払1人あたり保険金〈2014年度98,132円、2024年度148,970円〉、引き上げの約7割が円安の影響であること、4日と7日の改定率の例とその条件、2024年度の旅行日数の内訳、参考純率に使用義務がなく販売時期も保険会社が決めること、クレジットカード付帯保険への注意)
- 損害保険料率算出機構「傷害保険参考純率 改定(適合性審査結果通知受領)のご案内」(2026年6月30日)(6月23日の届出について、6月30日に適合性審査結果の通知を受けたこと)
- 損害保険料率算出機構「傷害保険参考純率」(海外旅行傷害保険は旅行期間によるリスクの差に応じた区分を設けていること)
- 日本損害保険協会 損害保険Q&A「海外旅行保険は、どのような保険ですか。」(保険期間は旅行日数に合わせて契約するのが通常であること、治療費用は保険金額を限度に実費が支払われること、病気の治療費用の対象となる期間〈帰国後72時間、感染症は30日〉)
- 外務省 海外安全ホームページ「海外旅行保険加入のおすすめ」(クレジットカードの海外旅行傷害保険は、限度額やサービス・条件の範囲がカードにより異なること)
- 熊本日日新聞(共同通信配信)「自動車保険料値上げへ 目安は過去最大14%引き上げ」(2026年6月23日)(海外旅行傷害保険の参考純率も平均40.3%引き上げる届出が出されたこと)
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報提供です。参考純率は保険料のうち保険金に充てる部分の目安で、実際の保険料や改定の時期は、保険会社・商品・契約条件によって異なります。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。
「今度の旅行、カードの保険で足りるのかな。」そう迷ったら、行き先と日数、お持ちのカードを教えてください。カードで足りるところと足りないところを、一緒に確かめます。別に保険をかけるかどうかは、そのあとで決めていただければ十分です。