防災の計画に「損害保険」と書く欄があります|事業継続力強化計画のしくみ

法人・事業の保険

「BCPって、うちみたいな規模でも要るんですかね」。数十ページの計画書を思い浮かべると、たしかに気が重くなります。ただ中小企業向けには、もっと短い枠組みが法律で用意されています。事業継続力強化計画。国の認定を受けられる制度で、しかもその計画には損害保険のことを書く欄があります。

法律に「損害保険契約の締結」と書いてあります

根拠は中小企業等経営強化法です。この法律は「事業継続力強化」を、自然災害や通信の重大な障害が事業に与える影響を踏まえて、対応手順を決め、影響を軽くする設備を入れ、損害保険契約を結び、関係者と連携し、組織や訓練でその実効性を確保すること、と定義しています(2条15項)。

そして計画に書かなければならない事項のひとつが、56条2項2号ハの「損害保険契約の締結その他の事業活動を継続するための資金の調達手段の確保に関する事項」。備蓄や設備だけでなく、止まったあとに動かすお金をどう用意するかまで含めて計画にしなさい、という組み立てです。防災訓練と保険が同じ書類の中に並ぶ、というのがこの制度の面白いところだと思います。

計画に書くのは全体で次のような項目です。

計画の記載事項(法56条2項)
  • 事業継続力強化の目標
  • 自然災害等が発生した場合の対応手順
  • 事業継続力強化設備等の種類
  • 損害保険契約の締結など、資金の調達手段の確保に関すること
  • 協力してくれる自治体、委託事業者、政府関係金融機関、商工会・商工会議所などがある場合はその内容
  • 組織の整備、訓練の実施など、実効性を確保するための取組
  • 実施期間と、必要な資金の額および調達方法

対象になる規模

業種資本金または出資の総額常時使用する従業員の数
製造業その他3億円以下または300人以下
卸売業1億円以下または100人以下
サービス業5千万円以下または100人以下
小売業5千万円以下または50人以下

このほか政令で指定された業種として、ゴム製品製造業(3億円以下または900人以下)、ソフトウェア業・情報処理サービス業(3億円以下または300人以下)、旅館業(5千万円以下または200人以下)に別枠があります。個人事業主も対象で、その場合は開業届が出ていることが条件です。組合も一定の条件で認定を受けられます。

認定を受けると、何があるか

認定事業者が使えるもの
  • 日本政策金融公庫の低利融資。設備資金は基準利率から0.9%、運転資金は0.4%の引下げ(引下げが適用されるのは貸付限度額のうち4億円まで)
  • 信用保証協会の別枠。普通保険や無担保保険について、通常枠とは別に追加の保証枠が用意されます
  • 防災・減災設備の特別償却。自家発電設備、止水板、耐震・制震・免震装置などが対象で、償却率は16%。認定の対象期間は2027年3月31日までとされています
  • 補助金の加点。ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、事業承継・M&A補助金などで加点措置があります
  • 損害保険料の割引。複数の損害保険会社と共済が、認定を受けた事業者についてリスクの実態に応じた保険料の割引を個別に検討する、としています。対応している会社の一覧は中小企業庁のページにあります

税制の適用条件は細かく、対象にならない法人の類型もあります。使えるかどうかは顧問の税理士か所轄の税務署にご確認ください。

手順と、かかる時間

自社だけで作る「単独型」と、複数の事業者が連携して作る「連携型」があります。申請は電子申請システムから行い、ログインにはGビズIDのアカウントが必要です。中小企業庁は、このアカウントの取得に最低でも2週間程度かかるとしているので、そこから逆算して動くことになります。

審査の標準処理期間は45日。計画の実施期間は最長3年です。認定を受けると、事業者名が中小企業庁のホームページで公表されます。期間が終わったあと内容を続けたい場合は、2回目の申請を行います。

この記事のまとめ

事業継続力強化計画は、中小企業向けに簡素化された防災・減災の計画です。国の法律が、その中身として「損害保険契約の締結」まで含めて求めているのが特徴で、備蓄や設備と、止まったあとの資金繰りを同じ紙の上で考えることになります。認定を受ければ低利融資、保証の別枠、設備の特別償却、補助金の加点、そして損害保険料の割引という道が開きます。GビズIDの取得と45日の審査を見込んで、早めに動くのがよさそうです。

出典

※本記事は2026年9月1日時点の一般的な情報提供です。認定の要件、金融支援、税制措置、申請の手続きは制度改正で変わります。最新の内容は中小企業庁のホームページで、税制の適用可否は税理士または所轄の税務署にご確認ください。保険料の割引の可否と内容は各保険会社の判断によります。補償内容やご加入の判断は、各保険会社の契約概要・重要事項説明書等を必ずご確認ください。

計画の「資金の調達手段」の欄で手が止まる方は多いと思います。いまの火災保険で何が出て何が出ないのか、水災は入っているか、休業中の損失はどう扱われるか。まずそこを一緒に確かめると、書くべきことが決まります。売り込みより先に、いまのご契約を一つずつ見るところから。

🏢 事業の備えと保険を確かめる(お問い合わせ)